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《2011年10月27日》
花泉診療センター―常勤医師不在、入院患者は転院
民間移管をともに進めた県の責任は重大


 10月27日の決算特別委員会で斉藤県議は、花泉診療センターの民間移管問題について取り上げました。
 花泉地域診療センターは、一昨年4月に無床化が強行され、そのわずか半年後に民間移管を理由にした県立花泉地域診療センターの廃止条例案を1票差で可決し民間移管が強行されました。しかしながら、民間移管がされた直後から常勤医師が実質不在のままスタートし、昨年7月に配置された常勤医師も9月までに退職願を提出し不在。入院患者は転院を迫られるなど深刻な事態となっています。
 9月定例県議会では、高田一郎県議の一般質問や決算特別委員会の知事に対する総括質疑でも取り上げ、県医療局の責任を追及してきました。
 斉藤県議は、現在の管理者も週3日の外来診療のみで責任を果たせていないと厳しく指摘。また医療法人と交わした「『10年間以上有床診療所として使用する』という賃借契約にも反する」と述べ、ともに民間移管を進めてきた医療局は断固とした立場で対応すべきと迫りました。遠藤達雄医療局長は、「医師の確保は民間でもなかなか難しいと思っている。引き続き事業計画通りやっていただくよう要請していきたい」と答えました。
 斉藤県議は、信頼のおけない医療法人に任せるのではなく、しっかり地域医療を守る方策を検討するよう強く求めました。
 
 医療局に対する質疑の大要は、「議会報告」をご覧ください。


《2011年10月24日》
被災県立病院の再建について知事に質す―知事「機能再生しなければいけない」
決算特別委員会で総括質疑に立つ


 10月24日、県議会・決算特別委員会で斉藤県議は知事に対する総括質疑に立ち、被災した県立病院の再建について達増知事に質しました。
 斉藤県議は、達増知事が本会議で「県立病院の再建を基本としつつ」と述べたことに触れ、「地元市町が復興計画に位置付けた場合それを後押しするということか」と質問。達増知事は、「地域医療の再生は喫緊の課題。市町と協力しながらしっかり取り組んでいく。」と答弁しました。また病院の機能についても「再生しなければならない」と回答。斉藤県議は、「地元市町も復興計画の中核に位置付け切望している。しっかり取り組んでいただきたい」と述べました。
 またTPP交渉の参加問題について斉藤県議は、「震災からの復旧・復興に取り組んでいるときに、それに逆行するTPP参加に被災県の知事として明確に反対すべき」と迫りました。達増知事は、「より慎重に対応していくことが必要と考えている」と述べるにとどまりました。
 さらに斉藤県議は、住宅ローンの二重債務解消について、「県が利子補給を行うのはいいことだが、住宅ローンの債務解消も切実な課題。事業者の場合と同じように債務の凍結、買い上げの仕組みを国に強く求めるべき」と主張しました。

 知事に対する総括質疑の大要は、「議会報告」をご覧ください。


《2011年10月21日》
JA岩手県中央会、県森林組合連合会、岩手県農業会議を訪問
TPP交渉参加反対のアピールを届け懇談


 日本共産党岩手県委員会は10月21日、JA岩手県中央会、県森林組合連合会、岩手県農業会議を訪問し、風雲急をつげるTPP交渉参加反対のアピールを届け、懇談しました。懇談には、菅原則勝県委員長、斉藤信、高田一郎両県議が参加しました。
 入口に「TPP断固反対」と書かれたムシロ旗をかかげたJA岩手県中央会では、田沼征彦会長が対応。「TTPは阻止しなければならない。国は自給率50%を言いながら、こういうことをやるとは。署名を集めて、総理に渡してくださいと思いを伝えてきた。全国での集会を次々に構えている。今月末が山場なのでご協力をよろしくお願いしたい」と語りました。同席した三浦真寿営農農政部長は、「テレビ広告を4局でやることにした。月末には組合員、役職員で街頭PRも行う」と決意を語っていました。
 懇談では、震災復興に進展が見られないこと、汚染された稲わら、堆肥の置き場所の問題など原発対応で大変なのに、その対応そっちのけで、TPPとは、と熱い懇談になりました。
 県森連では、「県民会議は生産者から消費者まで参加し、署名も10万目標のところを15万集まり、相当関心が高い。キャラホールの集会にも1000人が集まった。林業は自由化の荒波にもまれてきた産業ですが合板の6%が撤廃されれば、たいへんなことになる。再生プランでは自給率50%をかかげているのに、関税撤廃で外材にシフトすれば逆行する事態」と語りました。
 岩手県森林組合連合会では澤口良喜代表理事・専務、岩手県農業会議では佐々木正勝会長が応対し、懇談しました。


《2011年10月21日》
中小企業グループ補助金に300億円の増額補正

 10月21日の県議会本会議で、被災地の中小企業等が一体となって行う施設・設備の復旧、整備にたいし最大4分の3を助成するグループ補助金に300億円を増額する補正予算が全会一致で可決されました。
 補助金の第一次公募には、79億円の事業費にたいし申込額は約7倍の545億円(51グループ・339社)にのぼり、交付決定は8グル―プ・116社にとどまりました。また補助率も実質的に3分の1に圧縮されるなど、企業側からも多くの不満の声が出されていました。
 21日の商工文教委員会で斉藤県議は、「増額補正で3分の1に圧縮された補助率はどこまで戻せるか」と質問。経営支援課の松川章総括課長は、「事業の中身にもよるが基本的に4分の3になるように調整している」と答弁しました。また、第二次公募についても、基本的に補助率は圧縮せず交付する方向も示されました。
 斉藤県議は、「今回の補正は大変歓迎されるもの。できるだけ早く具体化を図り、希望するすべての事業者が対象となるよう引き続き国にたいし中小企業対策を求めていくべき」と主張しました。

 商工文教委員会での質疑の大要は、「議会報告」をご覧ください。


《2011年10月21日》
「TPP交渉への参加に関する意見書」を全会一致で採択

 10月21日の県議会本会議で、「TPP交渉への参加に関する意見書」を全会一致で採択しました。この意見書は、岩手県農協中央会(田沼征彦会長)、いわて食・農・地域を守る県民運動ネットワーク(荻原武雄会長)が提出したTPP交渉参加反対の請願採択をうけて提出するものです。
 意見書では、TPP協定は、「農林水産業を含む地域経済・社会の崩壊を招き、かつ医療、保険、雇用、食品安全性など我が国の基準・制度の変更など国のかたちを一変させるおそれがあることから、TPP交渉へは参加しないこと」としています。
 また、国民が望む安全・安心な食料・エネルギー等の安定供給、持続可能な農林水産業の振興、地域経済、社会、雇用の安定、環境保全等に向けた施策を確立ことを求めています。


《2011年10月20日》
TPP(環太平洋連携協定)交渉参加に反対する共同のたたかいを
県医師会、歯科医師会、県漁連と懇談


 日本共産党岩手県委員会は10月20日、菅原県委員長、斉藤信県議団長、高田一郎県議が、TPP(環太平洋連携協定)交渉参加に反対する共同のたたかいを広げようと、岩手県医師会、岩手県漁連、岩手県歯科医師会を訪問して、懇談しました。
 県医師会の石川育成会長は「この問題は私たちも反対です」と述べました。被災地の診療所や学校保険医の派遣など東日本大震災からの復興にむけた医師会の取り組みを語りながら、「今は、復興にむけて社会保障体制を守ることが大事。国はいったい何をやっているのか」と述べました。アピール(「しんぶん赤旗」号外)について、会長は、「共産党はこういうものを出しているので読みやすくていいですね。反対運動、連携して大いにやりましょう」と述べました。
 県漁連では大井誠治会長が、志位委員長をはじめとした5月の漁協訪問に対し、「先日はありがとうございました」とお礼を述べ、「被災地は7カ月たっても海のガレキが残り、秋サケ漁が5、6割になるとなれば大変なこと。生産から加工、流通まで再建しないと漁業の再生はできない。こんな時に輸入自由化はとんでもない。TPPは阻止しなければならない。連携していただければありがたい」と語りました。
 県歯科医師会では、安藤信貴事務局長が対応。「この問題は岩手はどの企業も反対でしょう。海外資本が入って医療保険が使えないとなれば大変。市場原理ではどうしても格差が生じます。格差があってはならないのが医療だと思います。」「民主党は公約をすっかりひっくり返してしまっている。岩手は岩手なりの声をあげていくことが大切だと思います」と述べました。


《2011年10月19日》
二重ローン対策―再建を希望するすべての事業者を対象に
商工文教委員会で質疑に立つ


 10月19日の商工文教委員会で斉藤県議は質疑に立ち、二重ローン対策について取り上げました。
 岩手県は、10月7日に岩手県産業復興相談センターを設立し、二重債務の相談等の受付を開始しているほか、岩手県産業復興機構(仮称)の立ち上げを予定。旧債権の買い取り等を行い事業者の再建を促進することとしています。
 斉藤県議は、「県として機構を立ち上げることは評価したいが、相談センター体制の大半を金融機関が占めるなど、銀行が融資できる一部の優良な企業しか対象にならないのではないか」と質しました。経営支援課の松川章総括課長は、「再建の意欲があり、数年の間で経営状況が黒字になっているところを対象にしたい」と回答。斉藤県議は「黒字経営だとか債務超過といった基準を絶対に設けてはならない」と厳しく指摘しました。
 また斉藤県議は、「対象の債権額も当面500億円と被災事業者の債権総額の推計から見ても大幅に足りていない」と強調。「被災事業者の立場に立ち、すべての再建を希望する事業者を対象にすべき」と求めました。斎藤淳夫商工労働観光部長は、「銀行が明らかに優良だと判断した以外の企業をどうやって救うかというのが機構の役割だと思っておりしっかり取り組んでいきたい」と答えました。

 質疑の大要については、「議会報告」をご覧ください。


《2011年10月18日》
高田一郎県議が初めての一般質問に立つ
住宅再建―県が住宅ローン利子補助へ。復興に逆行するTPPには反対を


 10月18日、9月定例県議会本会議で、高田一郎県議が初めての一般質問に立ちました。一関地域からも多くの方々が傍聴に来ました。
 高田県議は、県が仮設住宅入居者に実施したアンケートで、持ち家の再建を希望する回答が57%ともっとも強い要求になっていることを示し、「現行の被災者生活再建支援法の限度額を500万円に引き上げるよう国に求め、県としても住宅再建への補助をすべき」と主張。達増拓也知事は、「機会あるごとに国に対して支援金額の拡充等を要望している。被災した住宅の改修や再建を行う被災者への支援策として、住宅ローンの利子補給などの負担軽減策について現在準備を進めている」と答えました。
 また高田県議は、TPP交渉への参加は、被災地の主要産業を破壊し大震災からの復興への希望を奪うものだと厳しく指摘。知事として明確に反対を表明し、国に対しTPP交渉参加に反対するよう具体的行動をとるべきと迫りました。達増知事は、「地域の声も反映した国民の合意が得られるまで慎重に検討をすることが必要。現時点では協議の場への参加は時期尚早と考えている」と述べるにとどまりました。
 さらに高田県議は、出荷遅延牛への対応について、「売却金額と支援金の差額を返還する仕組みを改善し、出荷適齢期を過ぎたら県が買い上げ、県が東電に対して被害の賠償を全面的に求めるべき」と強く求めました。

 高田県議の一般質問の大要については、「議会報告」をご覧ください。


《2011年10月17日》
いわて食・農ネットがTPP交渉への参加に反対する請願を提出

 10月17日、いわて食・農・地域を守る県民運動ネットワーク(荻原武雄会長)は佐々木博県議会議長にたいし、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加に反対する請願を提出。日本共産党の斉藤信県議が紹介議員として同席し、民主党、地域政党いわて、社民党、無所属の県議も紹介議員となりました。
 請願では、国民生活と第一次産業・地域経済を犠牲にし東日本大震災からの復興に逆行する「環太平洋連携協定」(TPP)交渉には参加しないことを実現するために政府および関係機関に意見書を提出するよう求めています。
 岩手県農民連の久保田彰孝会長は、「岩手県の試算でもTPPへ参加した場合、県産農産物の生産額の6割に相当する1469億円が減少するとされている。建設から医療福祉まで幅広い分野から反対の声が上がっており、参加の検討自体をただちに中止すべきである」と主張しました。
 佐々木議長は、「11月のAPECで結論を出すということは拙速だと思う。もう少し多方面の検討がされる必要がある」と述べました。


《2011年10月17日》
保険医協会が被災地復興のため医療等の充実を求める請願

 10月17日、岩手県保険医協会(箱石勝見会長)は佐々木博県議会議長にたいし、被災地復興のため医療等の充実を求める請願を提出。斉藤県議が紹介議員として同席し、民主党、自民党、地域政党いわて、社民党、無所属の県議も紹介議員となりました。
 主な請願項目は、@2012年2月末までとなっている被災者の医療費窓口負担免除の延長、被災医療機関の抱える二重ローンを解消するよう国に要請することA本格的な診療所再建に必要な費用の補助を行うことB仮設住宅などに避難している被災者が医療を受けられるように、巡回バスの整備など必要な交通手段の確保を行うこと―など9項目です。
 小山田榮二副会長は、「本格的な診療所をつくらないことには地場が固まらず雇用も確保できない。交通確保も喫緊の課題だ」と述べました。


《2011年10月17日》
いわて労連などが原発からの撤退および自然エネルギーの本格的な導入を求める請願

 10月17日、いわて労連(鈴木露通議長)、原水爆禁止岩手県協議会(渥美健三代表理事)、岩手県平和委員会(永野正造会長)、平和・民主・革新の日本をめざす岩手の会(渥美健三代表世話人)の4団体は佐々木博県議会議長にたいし、東京電力福島第一原発事故の早急な収束と原発からの撤退・再稼働中止及び自然エネルギーの本格的な導入を求める請願書を提出。日本共産党の斉藤信県議が紹介議員として同席しました。
 請願では、@政府と東京電力は、情報を全面的に開示するとともに、国内外の専門家・技術者の知恵と力を総結集して、福島第一原発の事故を早急に収束させ、定期点検中の原発を再稼働させないことA政府及び東京電力は、福島第一原発の事故に伴うあらゆる被害に対して賠償責任を明確にするとともに、被害者(団体及び個人)に対してすみやかに賠償することB政府は原子力発電所をゼロにする期限を切ったプログラムを策定し、原子力発電から撤退することC政府は自然エネルギーの本格的な導入を推進すること―の4点について国に意見書を提出することを求めています。
 いわて労連の金野耕治副議長は、「県内でも各地で高い放射線量が検出されており、事故の早急な収束と自然エネルギーの本格導入が求められる」と主張。佐々木議長は、「岩手県としてもエネルギーの自給率向上に努力しなくてはいけない」と答えました。


《2011年10月17日》
生協連など11団体が石油製品の安定供給と原油高騰への特別対策についての請願を提出

 10月17日、岩手県生協連(加藤善正会長理事)や県農協中央会(田沼征彦会長)、県漁連(大井誠治代表理事会長)など11団体は佐々木博県議会議長にたいし、石油製品の安定供給と原油高騰への特別対策についての請願を提出。日本共産党の斉藤信県議や民主党、自民党、地域政党いわて、社民党、無所属の県議らが紹介議員となりました。
 請願では、@寒波や不測の事態を考慮して被災者や県民への供給が滞らないように、岩手県としても安定供給に向け積極的に取り組むことA岩手県として被災者救済のための「被災者支援灯油」や生活弱者支援のための「福祉灯油」の補助の実施・拡充対策を講じることB東日本大震災時の石油製品の量不足や流通の停滞が再び起きないよう安定供給に向け国としての責任を果たすこと―などを求めています。
 加藤理事は、「行政が石油製品に関し一切ノータッチというのは明らかに問題。東北の消費者・事業者は大きな不安を抱えており、特別な対策を講じてほしい」と訴えました。佐々木議長は、「震災での燃料不足問題は痛切に感じた。請願についてはしっかり対応させていただきたい」と答えました。


《2011年10月13日》
県立高田病院仮設診療所に入院機能整備へ
「被災した病院の再建を基本」―本会議で達増知事が答弁


 10月13日の岩手県議会・本会議で達増拓也知事は、県立高田病院の仮設診療所に入院機能を整備する考えを示しました。
 県立高田病院は、3月11日の東日本大震災津波で全壊。震災直後から、陸前高田市米崎地区コミュニティーセンターで診療を行ってきましたが、7月25日から陸前高田市米崎町内に建設された仮設診療所で外来診療を行っています。
 日本共産党の斉藤信・高田一郎両県議らは地元党市議団とともに、この間何度も被災した県立病院を訪問。「入院が必要な患者が毎日来ている。仮設診療所にも入院機能が必要」(石木幹人・県立高田病院院長)などの切実な声を踏まえ、被災した県立病院の早期再建整備、県立高田病院については仮設診療所にも入院機能を整備するよう県に申し入れてきました。
 本会議で達増知事は、被災した県立病院について、「病院の再建を基本としつつ、地元市町の復興計画等の議論を踏まえながら検討していく」と答弁。また入院機能については、「二次保健医療圏の基幹病院、民間医療機関等と協力し対応しているが、他の圏域に比べ急性期後の医療体制が脆弱であるなどの地域事情を考慮し、高田病院の仮設診療施設に入院機能(40床程度)を整備する考えである」と答弁しました。
 県立高田病院は1日平均220〜230人の患者が来ており、入院が必要な患者もいます。隣の県立大船渡病院への紹介や訪問診療で対応しているのが現状であり、早急な入院機能の整備が求められています。


《2011年10月8〜9日》
大震災・原発事故の復旧。復興のあり方を交流
宮城県鳴子温泉を会場に全国交流集会開かれる


 10月8〜9日、「どうする復旧・復興!全国交流集会inみやぎ」が宮城県鳴子温泉の「農民の家」を会場に開かれ、全国各地から230人が参加しました。私も岩手県民会議に結集する皆さんと参加してきました。この交流集会は全国災対連、東日本大震災津波救援・復興岩手県民会議、東日本大震災復旧・復興みやぎ県民センター、宮城災対連、東日本大震災・原発事故被害の救援・復興をめざす福島県共同センターが実行委員会を作って開催したものです。
 
被災3県から現状と課題を報告
宮入興一愛知大学教授が記念講演

 
 全国災対連の大黒作治代表世話人(全労連議長)が主催者を代表してあいさつ。高橋千鶴子衆議院議員も駆け付けあいさつしました。被災3県の代表が現状と課題について報告しました。岩手県民会議の鈴木露通事務局長は、この間陸前高田が2860人、大槌町が2388人など県内で13481人も人口が減少していることを指摘。岩手県の復興基本計画の積極的な面を評価する一方で、被災した県立病院の再建整備を明記していないことや三陸縦貫道など大型開発・ハード優先の問題点を指摘しました。緊急の課題として@応急仮設住宅の生活環境の改善、住宅確保への具体的支援、A県立病院の早期の再建と民間医療機関への支援、B漁業・水産業と中小商工業の再建、C県立高校・小中学校の再建と防災教育、C住民合意によるまちづくりの問題を報告しました。
 みやぎ県民センターの菊地修事務局長は、いまだに789人が避難生活を強いられ、車中生活の避難者もいたこと。仮設住宅で孤独死も発生しており、被災者の命と暮らしを守る取り組みの遅れと重要性を指摘。宮城県の震災復興計画について、農業の大規模化・集約化、漁港の集約化、水産特区の導入など住民不在で財界直結の計画となっていると報告しました。また、仙台から80q圏にある女川原発が大震災と余震で5つのうち4つの電源系統が切れて大事故寸前に陥っていたことを指摘し、放射能汚染対策とともに原発ゼロをめざす取り組みの重要性を強調しました。10月15日に仙台で開く「原発ゼロをめざし、放射能汚染・被害から命と健康を守る県民集会」の成功を呼びかけました。
 ふくしま復興共同センターの斎藤富春代表委員は、原発事故以来すでに6人が自殺に追い込まれ、56281人が県外に避難していること。うち約17000人の幼稚園・小中学生が県外避難しているが毎日増え続けていると報告しました。共同センターが実施した県民アンケートには2300人が回答、82%が早期の損害賠償を求め、87%が原発ゼロを求めていると紹介しました。前日も緊急に160人で東京電力に交渉に行ってきたとのこと。原発事故の最大の損害は「子どもを産み育てることができないこと」だと訴えました。10月30日には、「なくせ原発!10・30大集会inふくしま」を5000人規模で成功させたいと報告しました。
 宮入興一愛知大学教授が「東日本大震災からの復旧・復興の課題と展望」と題して記念講演しました。講演では、東日本大震災の災害の特徴、災害復興の基本理念と東日本大震災対策の基本的問題点、我が国の災害復旧・復興制度の「21世紀型」への転換の必然性、復興の諸課題、震災復興の対抗軸について分かりやすく話されました。
 その後10の分科会に分かれてテーマごとに活動の交流と意見交換がなされました。私が参加した分科会は「防災に強く住民に安心な自治体の再生を」のテーマでした。会場いっぱいの参加者の自己紹介の後、それぞれ報告・発言がありました。自治労連・地方自治問題研究機構の角田英昭氏は、神奈川県における震災対策の現況と課題について、アンケート調査を踏まえて報告しました。神奈川県でも東海地震(M8クラス)、神縄・国府津―松田断層帯地震(M7.5クラス)など切迫性ありとされる地震が想定されている中で津波対策など防災対策の見直しが検討されていること。公共施設の耐震対策やコンビナート対策の重要性が指摘されました。自治労連千葉県本部の白鳥裕一氏は、陸前高田市へのボランティアは県に5回にわたり100人、のべ300人以上が参加したと述べるとともに、千葉県内でも死者20人、行方不明者2人の被害とともに建物被害では全壊797棟、半壊9085棟、一部損壊30254棟に及んでいると報告。とくにコスモ石油千葉製油所の火災・爆発事故がずさんな管理のもとで10日間燃焼する事態となったことを告発しました。また、チッソ石油化学に765kgの劣化ウラン、住友化学に65.83トンの劣化ウランと1233グラムの天然ウランが備蓄されている問題も指摘しました。気仙沼民商の方は、自ら被災し仮設住宅に入っている。自主防災活動に取り組んできたが、大震災のようなときには住民がまとまって避難することは難しく、最短の高台に避難することが大事と述べました。気仙沼市では火事が10日間も続き地震被害よりも大きかった。仮設住宅での取り組みについてはコミュニティを確立することが大変だ。集落ごとに移転すべきと強調しました。
 仙台民商の方は、24町内が津波被害を受けたが、地元の200世帯の町内では町内会長が拡声器で避難を呼びかけ、死者はなかった。津波に対する認識が大きな分かれ目になったと述べました。仙台市では津波高は10mに及んだが、防潮堤の高さは7mにし、3mの丘を二つ作る計画だと述べました。
 私も発言し、仮設住宅の劣悪な生活環境の下で寒さ対策、交通対策が求められていること。被災者の住宅確保への具体的な補助の拡充、防潮堤の高さと浸水地域の活用の可能性、まちづくりあり方について住民自身の議論と合意が必要と述べました。
 分科会での討論は9日も引き続いて行われました。
 
全国の参加者が熱く交流
 
 夕食交流会には、全国から参加した170人が交流。九州、四国、中国地方、近畿、関東など全国からの参加者が紹介され、それぞれあいさつしました。岡山県の倉敷市議団は、倉敷市が遠野市にボランティアセンターを構え、自らも2回参加してきたこと。火山の噴火で全島避難を経験した三宅島からも参加していました。会場となった「農民の家」は農協法に基づく単独の温泉施設で、1000人が収容できるとのこと。その8割は自炊用。温泉も4つありユニークな施設でした。


《2011年10月6日》
宮古市の水産業・中小商工業対策を聞く
県立山田病院・大槌病院を訪問調査


 10月6日、朝7時過ぎ、高田一郎県議とともに盛岡を出発し宮古市に向かいました。10時に宮古市役所で田中尚、落合久三宮古市議団と合流し、宮古市の中村俊政産業振興部長、伊藤孝雄水産課長から宮古市の水産業の復興の取り組みについて説明を受けました。市の水産業の被害額は約220億円、漁港施設の被害額は127億円に及びます。この間3次にわたる補正予算を組み113億円の補助事業を進めています。この中には県に先駆けて養殖施設への8/9補助の取り組みもありました。しかし、漁船の確保では、中古船が24隻程度確保されているが新造船は造船が追い付かずまだ見通しが立たない状況とのこと。定置網は重茂で4か統、田老で1か統、宮古で1か統の見込み、宮古魚市場が4月11日から再開し、製氷施設もお盆前に復旧し稼働しているが水揚げがまだ少ないとのこと。
 県・国への要望では、県営の漁港(重茂、音部、田老)の復旧、旧魚市場の地盤沈下対策、国の栽培漁業センター・県の栽培漁業施設の早期の復旧が強調されました。
 市役所別館の産業支援センターで、佐藤日出海所長から宮古市の地域産業再生の取り組みについて聞きました。中小業者の二重ローン対策では、「産業復興機構」が設置されたが「現状ではあまり期待できない」の声も寄せられている。グループに対する3/4補助の事業も、結果的には事業費を1/3 に圧縮して実施されているのが実態と指摘。予算の大幅な拡大が必要と強調しました。雇用対策にとっても産業の再建こそ必要と述べました。県の店舗の修繕費補助事業は大英断だと評価しつつ、予算の規模が小さく市独自に上乗せし、被災工場への補助については製造業だけではなく全業種に拡大して実施する予定とのこと。また、大震災で従業員を解雇した事業者が、退職者を再雇用した場合、補助の対象にならないことは問題だと改善を求めました。市独自の基金事業があればローカルルールで実施できると述べました。放射能対策では、県として定期的な測定が必要と強調しました。

県立山田病院、大槌病院の仮設診療所訪問
通院バスの改善、CTなどの設備を

 
 午後には県立山田病院を訪問し、及川修次院長から仮設診療所の現状・課題について聞きました。国道45号線の豊間根から大沢に行く途中の坂道に仮設診療所が立っています。及川院長は、患者は診療だけでなく、買い物にも来る。まちの近場に病院は必要と述べ、仮設診療所にはCTも設置されていないと指摘。通院バスの改善については県北バスが検討しているようだと述べました。
 今後の病院の再建の見通しについては、山田町の人口がどうなるか、宮古医療圏の中で県立宮古病院の後方病院としての役割、老健などの整備状況などが問題になると述べました。木村洋子町議は、町議選の中で県立山田病院の再建を求める声が多かったと述べ、9.7メートルの防潮堤ができるなら被災した現在地での再建の可能性も検討できるのではないかと問題提起しました。及川院長は現在地での再建については、安全性の確保とともに職員はもとより地域住民の理解と納得が前提になるとの認識を示しました。
 大槌町の被災と復旧の状況を見ながら県立大槌病院の仮設診療所を訪問しました。岩田千尋院長から仮設診療所の現状と課題について聞きました。3月11日の津波の際には2階まで浸水し屋上に避難して患者の命を守ったこと。その後、大槌高校に避難するとともに患者の転院をスムーズに進めたと述べました。津波で亡くなった患者はいなかった。県立大槌高校のゆき届いた対応に感謝いっぱいだと強調。4月25日からは小槌の公民館で診療を再開。6月27日から国際ロジスティック協会から寄贈された仮設診療所で診療を行っていると述べました。内科医師3人と応援で外来機能は回復していますが、検査機能、特にCTが設置されていない現状を指摘。大槌町の人口減少、仮設住宅が遠くに設置されていること、交通の便が悪いことから、患者は震災前と比べて減少していると述べました。また、釜石医療圏は病院・診療所の連携がうまくいっており、震災時の対応も全国からの応援医師もスムーズに配置されたと述べました。課題では、仮設住宅からの交通アクセスの改善を強調。
 今後の病院の再建については、町の復興計画の中で町長には県立病院の位置づけを要望していると述べました。
 
碇川大槌町長を訪問
住民合意で復興計画作りを

 
 夕方5時過ぎに大槌町の仮設役場に碇川豊町長を訪問し懇談しました。碇川町長は、いまだに550人が行方不明となっていること。大槌町復興のグランドデザインを1日も早く示したいと副町長3人体制の必要性を強調しました。10月7日の臨時議会で選任の予定と述べました。雇用を生み出すためにも水産加工業の再建が必要と水産加工団地の先行取得もできるところから進めたいと述べました。復興計画作りのロードマップを示し、集落ごとの検討委員会を立ち上げ住民自身の議論と合意の形成に取り組むと述べ、そのためのコーディネーターの配置を進めると強調。進捗状況に合わせて「復興新聞」を発行したいと述べました。それにつけても国の財源の見通しが見えない。財源は当然国が責任を持つべきと強調しました。県立大槌病院の再建については、「ばっちり位置付ける」と明言しました。スピード感を持って3カ月で復興計画を確立したいと述べました。


《2011年10月3日》
新エネルギー導入の先進地・葛巻町を調査
県議団・盛岡市議団で


 10月3日、日本共産党県議団・盛岡市議団で葛巻町を訪問し、新エネルギー導入の先進地の取り組みについて調査してきました。この調査には斉藤県議と高田一郎県議、庄子春治、鈴木礼子、高橋和夫、鈴木努各市議、西山剛県常任委員が参加しました。
 朝7時10分に自宅を出発、東北自動車道滝沢インターチェンジで高田一郎県議と合流し、午前9時、くずまき高原牧場の交流館プラトーに到着。葛巻町の農林環境エネルギー課主任主事の日向信二さんから、葛巻町の新エネルギー導入の取り組みについて詳しく説明を受けました。
 
ミルクとワインとクリーンエネルギーの町―葛巻
「東北一の酪農卿」から「日本一の新エネルギーのまち」へ

 
 葛巻町は、人口7417人(2877世帯)、昭和30年の16000人をピークに減少し、最近でも年間100〜150人減少しているとのこと。面積の86%は森林です。農業算出額は約49億円、うち酪農が約40億円を占めています。乳牛約1万頭、肉牛約1千頭、牛乳生産量は年産約4万トン、日量110トンで、「東北一の酪農卿」です。林業では、自生の山ブドウを使ったワインづくり、町産材のカラマツ集成材が建築用材として活用されています。
 こうした中で1999年3月、「葛巻町新エネルギービジョン」を策定します。この基本理念は「天と地と人の恵みを生かして」です。「天のめぐみ」とは、風、太陽光、熱であり、「地のめぐみ」とは、畜産ふん尿、森林、水です。「人のめぐみ」とは、豊かな風土・文化を守り育ててきたことです。クリーンエネルギーの導入で魅力あるまち・魅力ある町民をめざすことにしたのです。きっかけは、1995年に「自然とともに豊かに生きるまち」の宣言をし、地域資源を活用したまちの魅力づくりをめざしたことです。この背景には町外業者による産廃処分場に反対する町民ぐるみのたたかいがありました。また、地球温暖化防止京都会議を受け、葛巻町としての独自の対応がありました。こうした時期に、エコパワー社から風力発電導入への打診があり、町議会議員全員が世界の先進地であるデンマークを視察した結果、新エネルギー導入を新たなまちづくりとして取り組むことを決めたとのことです。
 1000メートル級の山々に風力発電を設置することができた土台には、昭和50年代から取り組まれた北上山系開発がありました。このことによって、道路と電線が整備されました。風況調査も行われていました。こうして「日本一の新エネルギーのまち」への挑戦が始められました。自然・環境との共生の問題では、希少な猛禽類や山野草、鳥類の生息にも配慮し、1基当たりの出力増や本数減、風車間の距離を開けるなどの対応で、バードストライキや低周波などの問題は起きていないとのことでした。
 
風力発電で電力自給率160%、葛巻中学校や介護老人施設などに太陽光発電設備
充実した新エネ導入補助金―太陽光発電に上限9万円の補助

 
 新エネルギーの導入の柱は風力発電です。葛巻町も出資する第3セクターであるエコ・ワールドくずまき風力発電所は、1999年6月に稼働しました。400kw×3基で年間約200万kwhの電力を供給、2003年には電源開発によるグリーンパワーくずまき風力発電所が稼働。1750kw×12基で年間約5400万kwhの電力の供給をしています。これは、葛巻町全体の電力消費量3500万kwhの1.6倍です。固定資産税も現在約2000万円(平成16年には4000万円)の税収となっています。それぞれ25基の増設の計画があるとのことですが、東北電力が買い入れることができるのか、売電単価がどうなるかで見通しが決まるとのことです。再生エネルギー活用の新しい法律が制定され、固定買い取り制度が導入されますが、その中身は未定で今後の具体化が問われます。風力発電施設はどちらもデンマーク製で、第3セクターのエコ・ワールドくずまきの3基は稼働率20%で、採算はまだとれていないとのこと。1億6000万円の赤字とのことで、黒字になれば町民風車の可能性も検討したいと話していました。グリーンパワーくずまきは稼働率30%とのことです。売電単価がいまそれぞれ1kwh当たり9円、8円となっており、売電単価の設定が問題です。
 太陽光発電は、統合された葛巻中学校に整備されました。50kw、年間約5万kwhです(2000年)。介護老人保健施設アットホームくずまきにも20kw、年間2.4万kwhで設置されています(2003年)。くずまき高原牧場にも今年(2011年)20kwが設置されています。太陽光発電設備には、町独自に1kw当たり3万円、上限9万円の補助が出ます。葛巻町は、大震災を受けて今年度25カ所のコミュニティセンターに太陽光発電(5〜8キロワット)と蓄電池を設置することにしています。環境省の補助事業を使って1億6000万円の事業費のうち、太陽光発電の分は半額の6500万円が補助されます。
 地中熱ヒートポンプ、太陽光発電、町産材カラマツの集成材を活用した「ゼロエネルギー住宅」も葛巻型モデルエコ住宅として2008年にくずまき高原牧場内に建設されています。建設費は2200万円とのこと。住宅に入った途端に自然な温かさを感じました。文字通りゼロエネルギー住宅です。
 
家畜ふん尿・生ごみ、間伐材の利活用
バイオマスタウン構想を推進

 

 葛巻町が特に力を入れているのは、基幹産業である酪農と林業に関連した「バイオマスタウン構想」(2008年2月公表)です。その中身は、家畜ふん尿の利活用、事業所系食品廃棄物の利活用、木質バイオマスの利活用(ペレットの利用拡大、ガス化発電)、木炭産業の創出(土壌改良剤、水質浄化など)、町産材の利用促進、カラマツのブランド化などです。
 葛巻町は明治25年にホルスタイン種を導入して以来、北上山系開発などを経て「東北一の酪農卿」として発展してきました。家畜ふん尿の利活用は酪農にとっても新エネルギー導入にとっても一石二鳥の取り組みです。乳量は日量約110トンですが、家畜糞尿は日量約439トンに及びます。バイオマスプロジェクトとしてバイオマスシステムが導入されました。牧場内の成牛200頭分のふん尿13トンと生ごみ200キログラムを混ぜて、メタン発酵させ、液肥とメタンガスによる発電と温水を牧場内で利用しています。これによって家畜ふん尿のにおいとメタンガス発酵、生ごみの減量化の対策になるとのこと。採算は年間で250万円の赤字で、町が140万円、畜産公社が110万円負担しているとのことです。
 木質バイオマスの利活用では、地元の葛巻林業が石油危機を契機に1981年からバークペレットを製造しており、モデル木造施設「森の館ウッディ」(1988年)、エコ・パーク平庭高原「森のこだま館」(2008年)にペレットボイラーが設置をされています。介護老人保健施設アットホームくずまき(2003年)、小規模多機能居宅介護支援施設マイホームくずまき(2009年)にもペレットボイラーが暖房・給湯設備として設置されました。葛巻町森林組合は、岩手型ペレットストーブリース事業も行っています。2003年に実証試験事業として導入されたバイオマスガス化発電プラントは、森林の間伐材をチップにして発電と熱を活用とするものでした。5年間の実証試験を終了し町に無償譲渡されましたが、37キロワットの発電ができますがランニングコストがかかりすぎ運休となっていました。
 
3つの元気な第3セクターが地域活性化の力に
観光客が55万人、10年間で3倍に急増

 

 葛巻町のまちづくりを担っているのが「元気な3セク三兄弟」といわれる第三セクターの取り組みです。(社)葛巻町畜産開発公社(くずまき高原牧場)は、子牛の飼育などの酪農経営と牧場の多面的機能を生かした農業体験施設、交流宿泊施設を持ち、チーズやバターパンなどの加工製造販売も行っています。葛巻高原食品加工(株)(くずまきワイン)は、地元の山ブドウを使ったワイン・ジュースを製造。26種のワインを製造し、4銘柄がワインの品評会で銀賞・銅賞を受賞しているとのこと。葛巻町の特産品となっています。(株)グリーンテージくずまきは、24室、最大80人収容が可能な交流・宿泊の拠点です。年間の売り上げは葛巻高原牧場で10億5000万円、葛巻ワインは3億5000万円、グリーンテージは1億5000万円で、すべてが黒字となっています。3つの三セクで150人が雇用されています。「元気な3セク3兄弟」は、地域循環型経済の核になっています。
 体験学習や新エネルギー視察や観光などで、葛巻町を訪れる観光客は、新エネルギービジョンを策定し、風力発電に取り組んだ平成11年の約19万人から平成21年には55万人に、10年間で約3倍に急増しています。
 新エネルギーの導入と葛巻町のまちづくりに全国から注目が集まる中、視察が増えているとのこと。ピークの平成19年には300件、昨年は100件だったが、今年は原発事故と再生エネルギー問題などで関心が高まり200件以上になるとのこと。しかし、町内への宿泊は1割程度で、宿泊に結びつける工夫も必要です。また、各種視察には葛巻町の担当者が丁寧に対応していますが、今後は、観光協会や第3セクターへの委託・対応も検討し、ツアーへの対応も必要と話していました。
 
ゼロエネルギー住宅、木質バイオマスガス化発電
畜ふんバイオマスシステムを視察

 

 熱心な説明と質疑応答の後、葛巻高原牧場内にあるゼロエネルギー住宅、木質バイオマスガス化発電、畜ふんバイオマスシステムの施設を見せていただきました。ゼロエネルギー住宅は、地中熱を利用したもので、地下30メートルに7本のヒートポンプを敷き、太陽光発電と太陽熱温水器と併用で自己完結型のエネルギーシステムとなっていました。住宅に入った途端、やわらかな温かさを感じました。ちなみに地中熱ヒートポンプで600万円、ゼロエネルギー住宅の建設費は2200万円とのことでした。
 木質バイオマスガス化発電施設は、間伐材をチップにしてガス化発電しようとするもので、120kwの発電が可能とのこと。しかし、5年間の実証試験の後、葛巻町に無償譲渡されましたが、ランニングコストがかかり運休となっていたことは残念でした。採算がとれるまでの実証試験と改善策が必要と感じました。木質バイオマスの利活用は葛巻町だけではなく、森林県岩手にとっても、日本の林業にとっても重要な課題です。
 畜ふんバイオマスシステムは、家畜のふん尿と生ごみを処理し、良質な肥料となる液肥と37キロワットの発電、温水が牧場内で利用されています。家畜ふん尿のにおい対策としても有効ということでした。
 
標高1000メートルの上外川高原に立つ風力発電
吹雪の中で視察、午後の袖山高原の風力発電も視察

 
 葛巻高原牧場から国道281号線を通って 小屋瀬から高原に向かい40分、北上山系開発で整備をされた林道は車1台が通れる舗装道路。行き交う車もほとんどなく進みました。標高1000mの高原に風力発電施設・風車が12基設置されています。高原は雪と雨が横殴りで降り注ぐ山の天気。かろうじて目の前の風車の姿が見える状況でした。風車の高さが60メートル、風車の直径が66メートルで最大高さは123メートルになります。1基175キロワットで12基で21000キロワットの発電出力です。
 午後には、葛巻町の東側となる袖山高原に最初に設置された第3セクターのエコ・ワールド風力発電施設に足を運びました。さいわいに青空が見える天候で袖山高原に放牧されている牛・ホルスタインの姿とともに牧歌的な風景でした。国道からの道路は大規模林道で2車線の立派な道路でした。高原のレストハウスも開いていてコーヒータイムを取り、山葡萄酒で一服しました。ガラス張りのレストハウスからの眺望も最高でした。
 
町の教育次長と葛巻中学校から
環境教育の取り組みを聞く、推進役は子どもたち

 
 昼食は町の担当者から紹介された役場近くのお蕎麦屋さんで、とろろそばをみんなで食べました。冷えた体にあったかい、おいしいおそばでした。その後、葛巻町の教育委員会を訪ね、近藤勝義教育次長さんから、まちづくりと環境教育の取り組みについて聞きました。近藤次長さんは町の新エネルギー対策に長年かかわった方だと聞いて、教育分野を超えた話が聞けました。新エネルギービジョンでは、バイオマス利用についても検討されたが、当時経産省ではバイオマスを新エネルギーとしてとらえていなかったとのこと。葛巻町としては地元の産業である林業と酪農によるふん尿処理は切実な課題だったとのこと。温暖化防止と合わせて町おこしにつなげる葛巻町流の対策だったと強調しました。また、「ないものねだりからあるものを生かして」への発想の転換でもあったとのこと。
 「省エネルギーの推進役は子どもたち」の立場で、環境教育に力を入れ、葛巻小学校では、毎年「全校省エネルギー集会」が開かれています。子どもたち自身の省エネルギーの取り組みは、高学年から低学年へ、子どもから家族・大人へと広がっています。こまめに電気を消すこと、水の節約、お風呂に時間をかけずにはいることなど、子どもたちが率先して取り組んでいるとのこと。葛巻中学校では、統合中学校として建設されたときに、統合校のシンボル・魅力の一つとして太陽光発電の420枚のパネルが設置されました。当初は50kwの出力があったそうですが、現在は30〜35kw程度とのこと。毎年環境教育の講演会が開かれていると侘美庸校長が話していました。
 葛巻町では中高一貫教育が取り組まれています。地元の葛巻高校への進学率は75%で、国公立大学への進学も5〜6人、就職率は9年連続100%と頑張っているとのこと。地元の県立葛巻高校の存続を強く要望されました。
 最後に驚いたのは近藤教育次長さんも新エネルギーの取り組みを説明してくれた担当者の日向さんの名刺も、使用済みのポスターを再利用したものでした。近藤さんは盛岡で買い物をした時も包み物は外してくるとのこと。葛巻町にごみは持ち込まないためとのことです。町役場の職員が省エネルギーの先頭に立っている姿に感動しました。最近は薪ストーブが広がっていることも紹介されました。
 自主自立の立場で、地元の資源を最大限活用して、全国の先頭を行く新エネルギー導入の取り組みを進めている葛巻町の町づくりを学んだ1日でした。