2024年12月4日 12月定例県議会本会議
議案に対する質疑(大要)
・紫波地域診療センターの廃止について
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。議案第6号、県立病院等事業の設置等に関する条例の一部を改正する条例について質問します。
この議案は、岩手県立病院等の経営計画案に基づいて、紫波地域診療センターを令和8年3月末に廃止しようとするものであります。
紫波地域診療センターは、昭和23年11月1日に、岩手厚生連志和診療所として設立され、昭和25年岩手県志和診療所に移行し、一般病床22床、結核8床、伝染4床の計34床でスタートしたものであります。昭和27年11月1日に、岩手県立志和病院に名称変更されました。昭和39年12月1日には新築され県立紫波病院と名称変更されました。その時は一般病床50床、結核15床の計65床となり、附属志和診療所併設となりました。
昭和63年6月21日に、新病院の移転新築工事が着工され、平成元年4月1日に現在地で診療が開始されました。標榜診療科が内科、外科、小児科、リハビリテーション科の一般病床60床での再スタートでありました。特養ホームにいやま荘と隣接し、廊下で結んだ施設整備で、医療・介護・福祉の連携をめざすモデルとして注目されました。重大な転換点となったのは、平成18年(2006年)に19床の診療所化が強行され、県立中央病院附属紫波地域診療センターとなったことであります。さらにそのわずか3年後の2009年には、一般病床19床も休止され、無床診療所化となりました。この時には地域住民の強い反対運動があって、医療局は何度も地域説明会を開きましたが、無床化は強行されました。
県立紫波病院、紫波地域診療センターは74年の歴史ある医療機関であります。
医療局長に質問します。第一に、74年の歴史を持つ紫波病院、紫波地域診療センターの果たしてきた役割をどう受け止めているでしょうか。74年の歴史を持つ県立医療機関を廃止することについて、地域住民にどう説明し理解を求める取り組みをしてきたでしょうか。今からでも地域住民に説明会を開くべきではないでしょうか。
【医療局長】
まず、紫波地域診療センターが果たしてきた役割についてでありますが、議員ご紹介の通り、同センターは平成17年度まで県立紫波病院として入院機能を提供してまいりましたが、診療センター化以降は、地域におけるプライマリーケア領域の外来医療を担ってきたところであります。
一方、近年は患者数が1日平均30人を下回り、周辺に民間医療機関が充実していることから、県としての役割を終えたと判断し、次期経営計画に廃止を盛り込んだところであります。
医療局といたしましては、8月上旬の素案公表以降、県議会での議論をはじめ、住民の方の代表も構成員となる地域医療構想調整会議や、県立病院運営協議会でご議論いただいたほか、パブリックコメントを実施し、丁寧に意見を聞く場を設け、理解促進を図ってまいりました。
【斉藤議員】
第二に、紫波地域診療センターの廃止は、「県立病院等の経営計画」(2025-2030)案に基づくものです。11月18日の議案説明会で「県立病院等の経営計画」の最終案が示されました。今年度の赤字が90億円となり、看護師120人を削減するという重大な修正となる計画案であります。最終案自身徹底した検討が求められるものであります。まだ計画が案の段階で、紫波地域診療センターを先行して廃止する条例を強行することはおかしいのではないでしょうか。
【医療局長】
条例改正の提案時期についてでありますが、経営計画は、素案公表後、県議会一般質問や決算特別委員会等で幅広くご議論いただいたほか、すべての圏域で地域医療構想調整会議や県立病院運営協議会を延べ18回にわたり開催し、ご意見をいただいたところでございます。また、病院・地域診療センターの所在する市町村には、直接職員が訪問し説明した後に、意見照会を行ったほか、パブリックコメントでも全体で240件のご意見をいただいております。
医療局といたしましては、いただいたご意見すべてを吟味し、所定の手続きを経て、紫波地域診療センターの廃止を含む計画を最終案として決定し、今般報告を行ったものであり、施設の廃止については条例改正の手続きが必要となることから、最終案の報告と合わせて今定例会に議案を提出しているものでございます。
【斉藤議員】
第三に、地域住民の願いは、紫波町内に入院ができる医療施設を確保することです。
12月2日、紫波町議会は、12月会議の開会日に緊急動議が提出され、「県立紫波地域診療センターを廃止せず、機能強化の充実を求める意見書」を圧倒的多数で可決し、同日に達増知事と医療局長あてに送付しています。どう受け止めているでしょうか。少なくとも地域住民に対する説明責任を果たすべきではないでしょうか。人口3万3千人の紫波町内には入院できる医療機関がありません。この状況をどう認識されているでしょうか。紫波町の入院患者の状況をどう把握されているでしょうか。
【医療局長】
紫波町議会の意見書についてでありますが、いただいた意見書は、センターの存続や入院ベッドの復活を求めるもの等であり、すでにパブコメ等でいただいたものと同様の内容でございました。
医療局といたしましては、こうしたご意見について十分に議論を尽くし、やはり民間医療機関が充実している地域にあって、県立としての役割は終えたと判断し最終案を取りまとめたところであり、今般の意見書をもって経営計画の策定に影響を与えるものではないと考えているところでございます。
なお、入院医療については、県の保健医療計画において二次保健医療圏を単位として対応するものとされており、個別の市町村ごとにその有無を評価するものではないと認識しているところであります。また、町内の患者の入院状況につきましては、保健福祉部から二次保健医療圏ごとに把握しているものとうかがっており、市町村ごとには明確に申し上げられませんが、同一医療圏内である矢巾町や盛岡市で、入院医療を受けている事例が多いものと認識しているところでございます。
【斉藤議員】
第四に、紫波地域診療センターは廃止ではなく、入院ベッドを持つ医療機関として復活させることこそ検討すべきではないでしょうか。
【医療局長】
入院ベッドについてでありますが、県立病院は民間医療機関が立地しにくい地域において医療を提供していくこととしており、先ほどご答弁申し上げましたが、入院医療につきましては二次保健医療圏の中で対応されるものであり、紫波町が含まれる盛岡保健医療圏につきましては、盛岡市や矢巾町に大規模な病院が多数存在し、必要な病床数は十分確保されているものと認識しており、県立として新たにベッドが必要な状況とは考えていないところでございます。
【斉藤議員】
第五に、紫波病院が現在地に移転新築整備された際、隣接する特養ホームとの医療・介護・福祉の連携のモデルとされましたが、この取り組みはどう進められてきたのでしょうか。
【医療局長】
特養ホームとの連携についてでありますが、旧紫波病院は、特別養護老人ホームや紫波町のデイサービスセンターと渡り廊下でつながっており、特別養護老人ホームの入所者の急変時等の診療やリハビリにかかる施設職員への技術指導などを行ってまいりました。
旧紫波病院の病床無床化以降は、当直医もいなくなったため、入所者の急変対応等については他の病院が担っており、現在はセンターの医師が特別養護老人ホームの嘱託医などを行っている状況でございます。
【斉藤議員】
第六に、「県立病院等の経営計画」最終案では、今年度90億円の赤字見込みということでありますが、全国の公立病院だけでなく民間病院も深刻な状況であります。全国の病院、各組織が連携して、コロナ補助金の復活や賃上げ分を補填する診療報酬の引き上げ、病院経営を維持する独自の交付金の実現などに取り組むことが必要ではないでしょうか。自公政権が過半数割れした新しい国会の状況の下で、こうした要求を実現する可能性は切り開かれているのではないでしょうか。
【保健福祉部長】
民間医療機関も含めた医療機関に対する支援についてでございますが、物価高騰や賃金上昇等の状況を踏まえまして、本年6月に診療報酬を+0.88%引き上げる改定が施行されました。
一方で、国内の複数の医療関係団体からは、診療報酬改定後もなお厳しい経営状況を踏まえ、国による財政支援等を求める声が上がっており、県としても地域医療を担う医師の確保をめざす知事の会や全国知事会等を通じて、国に緊急的な財政支援等の実施について提言・要望を行ってまいりました。
今後国会で審議される経済対策案においては、医療・介護・障害福祉分野における食材料費・光熱費等の支援などが盛り込まれたところであり、国から事業の詳細が示され次第、医療施設における物価高騰対策など支援策の速やかな実施に向け検討してまいります。
【斉藤議員】
最後に、紫波地域診療センターの廃止は、74年の歴史を持つ県立の医療機関の歴史を絶つ重大なものであります。少なくとも地域住民に丁寧に説明し、理解と納得を得られるように取り組むべきではないでしょうか。
【医療局長】
地域住民への説明についてでありますが、先ほどもご答弁申し上げました通り、紫波地域診療センターの廃止を含む次期経営計画の素案については、住民の方の代表も構成員になっている地域医療構想調整会議や県立病院運営協議会でご議論いただいたほか、パブリックコメントを実施し丁寧に意見を聞く場を設けてきたところであります。
そのうえで、限られた医療資源の中で持続的に医療を提供していくために、民間医療機関が立地しにくい地域で県立病院が役割を果たしてくという基本方向については、多くの方々から賛同をいただいたところであり、紫波地域診療センターの廃止を最終案でも維持しているところであります。
今後、通院している患者の皆様に廃止について説明させていただき、患者の皆様がセンターで受けられている医療については、その内容を踏まえ同様の医療が継続できるよう適切に他の医療機関等に紹介してまいります。
・県人事委員会勧告に基づく給与改定について
【斉藤議員】
次に、昨日提案された県人事委員会勧告に基づく給与改定議案、第19号、第24号、第27号、第28号について質問します。
今回の給与改定案は、行政職の平均で月給1万952円、3.11%の引き上げとなるものであります。総額では51億2200万円となります。
第一に、これまでにない引き上げとなりますが、物価上昇を超える賃上げとなるのでしょうか。実質賃金はどうなるのでしょうか。
第二に、この30年間で県職員の賃金は大幅に引き下げられてきました。民間の賃金も引き下げられてきた結果です。失われた30年で賃金も経済も低迷してきたのではないでしょうか。ピーク時と比べて、今回の引き上げでどこまで回復するのでしょうか。
第三に、県職員の賃金がピーク時から回復しない状況のままで、特別職の報酬を引き上げることはいかがなものでしょうか。県議や知事、副知事等の特別職の報酬は、県職員の賃金と比べれば、まだ高い水準だと思います。県民自身の実質賃金が下がり続けている中で、特別職の報酬を引き上げるのは県民の理解が得られないと考えますがいかがでしょうか。
第四に、会計年度任用職員の給与改定はどう引き上がるのでしょうか。臨時国会では国家公務員の給与改定議案がまだ可決されていませんが、いつ支給されるのか示してください。
【人事委員会事務局長】
実質賃金の状況についてでありますが、本年4月の盛岡市における消費者物価指数は、前年同月比で3.1%の上昇となっているのに対し、必ずしも連動するものではありませんが、職員給与と民間給与との格差は3.11%となっています。人事委員会では、生計費等のさまざまな要素が勘案されている民間の給与水準との均衡を図ることを通じて、職員給与にも生計費等が反映されていると考えており、民間給与との格差を踏まえ、月例給の引き上げ改定を行うことが適当である旨勧告したところであります。これに伴い、特別給を含めた平均年間給与額の引き上げ率は3.76%となるものであります。
次に、ピーク時との比較についてでありますが、40歳の主査級職員を例に、ボーナスを含む年収ベースでもっとも水準の高かった平成11年度の改定前の給与額と今回の勧告後の給与額との比較では、年収で約65万円下回っております。同様に、現時点の給与額との比較では約76万円の差となっておりますので、今回の勧告により約11万円その差が縮まることとなります。
【総務部長】
特別職の報酬についてでありますが、県の特別職は法令の定めるところにより、選挙や議会の同意を経て選任されるものであり、その報酬水準は、職務の特殊性と職責の重さに対応したものでなければならないと考えております。
特別職の報酬額の改定においては、これまでも一般職の給与改定の状況等も踏まえながら、年度ごとに改定の実施を判断してきたところであり、現時点においては東北他県と比べて低い水準にあります。そうした中、本定例会に提案している条例改正案については、県内の民間の給与水準や生計費を反映した人事委員会勧告において、一般職の給与の大幅な引き上げがあったこと等を勘案し、県議会の意向も確認したうえで、県内の産業・労働・福祉等の学会の代表者によって構成される特別職報酬等審議会の「引き上げ妥当」との答申を踏まえ、報酬を引き上げようとするものであります。
会計年度任用職員の給与の引き上げについてでありますが、本定例会に提案している条例改正案による今年度のパートタイムのモデル年収は、改定前より約32万円増加し約285万円となります。これは会計年度任用職員制度導入前の臨時職員と比べると100万円を超える増額となるものであります。今回の給与の引き上げにかかる差額の支給については、提案の通り可決された場合、常勤職員も含め年内に支給できるよう速やかに手続きを進めたいと考えております。
<再質問>
・紫波地域診療センターの廃止について
【斉藤議員】
紫波町議会で12月2日に意見書が採択されたと。議会の意見書というのは町民の総意ですよ。町民の総意がこのように示されたら、それにきちんと誠実に対応することが必要ではないでしょうか。パブコメで出されたから済んでいるという答弁はおかしいですよ。パブコメの回答はまだ我々にも示されていませんよ。あなた方の回答は全然示されていないんですよ。
私は冒頭に県立紫波病院・紫波地域診療センターの歴史に触れました。74年間の歴史の重み、県立病院、医療機関がなくなるんですから。その重みをしっかり踏まえて医療局は対応すべきではないのかと。今まで診療所化とかベッドを無くすとか重大な変更がありましたけれども、そのときは何度も説明しているんですよ。この間、地域の方々は2週間で1300名を超える署名を集めました。多くの方がよく分かっていなかった、知らされていなかった。地域医療構想調整会議とか県立病院運営協議会というのは、いろんな議題があってその中の一つなんですよ。この県立病院の経営計画について議論したものでは決してないんです。
町長さんにも私お会いしました。当初は紫波町も存続を求めたんですよ。行政ですから、さまざまな事情で抵抗しきれなかったというのはあるでしょう。しかし住民がそれを認めたわけではないと。この町議会の意見書の採択というのをもっと重く受け止めてやっていただきたい。
そもそも最終案はこの議会でもまだまだ不十分ですよ。明日も常任委員会があるでしょう。なぜこの最終案がまとまらないうちに廃止を決めるのか。2月議会で間に合わないのですか。それだって1年前じゃないですか。そういうことをしっかり答えていただきたい。
【医療局長】
意見書の関係でございますけれども、先ほど申しました通り、いただいた意見書は、センターの存続や入院ベッドの復活を求めるもの等でございまして、すでにさまざまご議論いただいて、またパブコメ等でもいただいた内容と同様というものでございました。医療局といたしましては、こうしたご意見について十分に議論を尽くしたものと考えておりまして、やはり民間医療機関が充実している地域にあって、県立としての役割は終えたと判断し、最終案を取りまとめたところであり、今般の意見書をもって経営計画の策定に影響を与えるものではないと考えているところでございます。
また、最終案につきましては、すでに素案でご提示している基本方向等については、修正を行っておらず、見直しを行った部分につきましては、直近の経営状況を踏まえた収支計画に関する部分でございます。その大きな要素となっているのは、入院患者の今後の見込みを今年度の状況に応じ下方修正したというものでございまして、入院される患者が減少すれば使用しなくなる病棟が生じてくるのは当然のことであり、そうした病棟の発生を見越して病棟やそこに配置する職員の削減を計画上織り込んだものでございます。患者数の減少に合わせて病棟と職員が減少するという現時点でのあくまでも想定の計画であり、患者数が想定に反し横ばいで推移するような場合は、病棟削減を行う必要がないということかと存じます。今後の患者推移等については、いつの時点で見込みを立てるかによっても変化してまいりますので、その点をもって政策的に大きな修正を行ったというものではありませんので、ご了承いただければと思います。
<再々質問>
【斉藤議員】
町議会で意見書が採択されたということは、医療局の提案が理解されていないということなんですよ。説明責任を果たしていないんですよ。説明責任を果たすべきだ。パブリックコメントの回答も示されていないんです。2月議会ではなんで間に合わないんですか。
【医療局長】
いずれこれまで議論したところでございまして、最終案として報告したタイミングをもちまして施設の廃止に伴う条例を一緒に提出をさせていただいたという流れでございます。