2024年2月29日 文教委員会
教育委員会に対する質疑
(大要)


・教職員働き方改革プランについて

【斉藤委員】
 教職員の働き方改革は、前文にあるように教育行政の最重要課題と。すでに過酷な教員の労働実態を踏まえて、教員の志望者が減っていると。現場では、十分教員を確保できずに教員不足と、これは全国的な問題で大問題になっています。そういう異常な事態になっているということを前提にして、この問題をしっかり解決していくためには、1つは、勤務実態を正確に把握する。その要因を明らかにする。そうしてこそ解決の方向が見いだされると思うんです。
 実は文科省が2022年に全国教員勤務実態調査というのをやりました。それを見ると、小学校の教諭は、平日の勤務時間11時間23分、週あたりの勤務時間は59時間19分、平日の休憩時間1日5分。中学校は、平日11時間33分、週あたりの勤務時間は63時間59分、平日の休憩時間1日7分。高校教諭は、平日10時間36分、週あたりの勤務時間59時間00分、平日の休憩時間1日24分と。これは全国の実態調査です。岩手の実態もだいたいこの通りと受け止めてよろしいでしょうか。

【教職員課総括課長】
 令和4年度に文科省が調査した結果でございますが、岩手県の状況について、都道府県単位での調査結果、回答内容につきまして現時点で公表されておりませんので、調査結果についての岩手県の状況については把握できておりません。

【斉藤委員】
 おそらく大きな違いはないと思うんです。だから本当にこれは小学校で平日11時間23分、勤務時間は7時間45分ですから、1日の休憩時間が5分というのも、ほとんど休憩時間がないということですよね。そういう意味で本当に異常な事態だと。
 そうした中で100時間超えの教員がいた、80時間を超えている教員がいたと。これは異常中の異常なんですよ。県の人事委員会が職場実態調査をやるけれども、全体の職員の超過勤務は30時間以上で調べるんですよ。100時間以上で調べるのは教員だけです。こんなに落差がある。先ほどの報告では減ってきたということで、それは良いことですが、100時間を超えるというのは減らす問題じゃないんです。ただちに解消すべき課題なんです。過労死ラインを超えているんだから。減ったことは評価するけれども、本当に過労死になってもおかしくない状況というのは一刻も早くなくすという課題。そして一方で、もう少し実態を言いますと、12ページのところにありますが、80時間以上の教員の延べ人数というのはあまり変わっていないと。だから超異常な100時間は減った。しかし異常な80時間というのも過労死ラインですので、これは減っていない。実数でいっても令和4年度で延べ1059人。これは全体とすればこの数年であまり変わっていない。おそらくコロナで減ることが予想されたけれどもあまり変わっていないというところに、異常な勤務実態が今もあるという認識で、この問題を取り上げるべきだと。
 そこで、問題はなぜこんな異常な勤務実態になっているか、その要因です。2つ問題があります。授業を中心とした業務、これでどのぐらい時間がかかっているのか。もう1つは業務外―部活動や生徒指導など。これは把握されていますか。

【義務教育課長】
 教師が本来やらなければならない業務、標準授業時数を踏まえた授業時数の設定というところについて説明申し上げます。
 教育課程における授業時数の状況ですけれども、今年度県が実施いたしました教育課程の編成実施状況調査の結果によりますと、標準時数の1015時間を超える授業時数を設定している学校の割合は、小学校は269校中247校で91.8%、中学校は145校中121校で83.4%となっています。このうち、国が大幅に上回る時数の基準の目安として示している1086時間以上を設定している学校の割合は、小学校では269校中8校で3%、中学校では145校中6校で4.2%となっており、令和3年度調査結果と比較し、小学校では16.9ポイント、中学校では18.5ポイント減少し、改善が進んでいるものととらえております。

【斉藤委員】
 実は、質の高い教師の確保特別部会、2023年12月14日開催の第7回で、ここで妹尾さんという方が、教職員定数のあり方に関する意見・提言をしています。いわゆる業務、教科指導、授業準備、成績処理だけで正規の勤務時間、ほぼ7時間かかっていると。その他の業務もあるので7時間45分で収まるわけがない。標準授業時数出ましたが、今でもこんなに大変なのに標準授業時数を超えているということ自身が、無理に仕事を増やしているということにならないか。これは文科省も、中教審だったと思いますが緊急の提言を出しています。標準授業時数を超えているものは是正しなさいと。こんなに大変な時代になっているときに、標準授業時数に基本的には戻すということをしっかりやるべきだと思います。これは22ページのところに書かれているので、あなた方は指摘していないわけではないが、本来の業務時間だけで勤務時間に達するようなことになっているとすれば、やりすぎていればきちんと縮小するということがあってしかるべきだ。これはきちんと是正するところは是正すると。本来の業務時間で勤務ができるようにするという風にしっかり徹底すべきだと思いますがいかがですか。

【義務教育課長】
 業務の適正な運用の観点から、過剰な上乗せは望ましくないものと認識しております。先ほど申し上げました本調査結果を受け、各学校では令和6年度以降の教育過程編成において、見直すことを前提に点検を行い、指導体制や教育課程の編成の再編等により、指導体制に見合った計画とするよう、改めて標準授業時数に達する考え方について、本県では市町村教委を通じて通知を行ったところでございます。

【斉藤委員】
 私は本来の業務時間だけでも勤務時間がいっぱいになるような、そういう問題はただちに是正すべきだと。もう1つの是正の仕方は教員を増やすことなんですが。
 もう1つ、皆さんも「学校教職員を取り巻く環境の変化、少子化の進行と子どもの抱える困難の多様化・複雑化」と指摘しています。驚いたのは、ユニセフの2020年の調査で、子どもたちの精神的幸福度、日本は38カ国中37位です。先進的幸福度が世界最低です。これについて尾木直樹さんらは、「日本の子どもの先進的幸福度の低さ、その背景には教育政策上の問題がある。日本では15歳で迎える高校受験によって、子どもたちは偏差値という学力指標だけで振り分けられてしまう。競争原理に基づく一斉主義により序列化するわけですから、子どもの自己肯定感がガタガタになり、幸福感が育たないのは必然だ。子どもの7割がいじめの加害経験を持ち、8割が被害経験を持っている。子どもの自殺も日本の大きな問題だ」と指摘しています。実は10歳から14歳の子どもの死因の第1位は自殺で、世界で一番です。そのぐらい子どもをめぐる状況は大変になっているんです。だから今先生に求められているのは、そういう子どもたちのケアなんです。これは大変な仕事です。余裕がなかったら、そういう子どもたちに寄り添うことができない。だから、授業を中心とした業務以外でも大変な仕事を担っている。いま担い切れていないと思う。それは、不登校やいじめといった指標でもはっきり示されていると思うんです。だから、子どもを取り巻く状況がそういう状況だったら、それにも対応できるよう、やはり決定的に教員を増やす以外にないんです。
 これは中教審の部会に、全国知事会・全国市長会・全国町村会が提言をしています。その一番大事なところは、教育を増やすこと、いわゆる標準法における乗ずる数の見直しと。標準法×乗ずる数ということで教員定数が決まるんですね。だから「乗ずる数」を上げると。そうやって教員定数を増やすべきだというのが地方三団体の提案であり、教員の処遇の抜本的見直しということも提案をしています。だから業務を必要な規模に絞り込むこと、しかし業務以外の仕事というのは減らせるものと減らせないものがあると。逆にいけば、教員の役割は昔よりももっと大変になってきていると思いますね。だったら教員を抜本的に増やす以外に解決の道がない。そこを示さないと、小手先の手立てで今の異常な長時間勤務というのは打開できないのではないか。
 全国知事会も含めてこういう要望をしているので、本当にそういうことなしには、今の異常な超過勤務は根本的には打開できないと思いますがいかがですか。

【教職員課総括課長】
 ご指摘の通り、学校をめぐる課題は複雑多様化しております。それに対応するために、ソーシャルワーカー等の専門の職種の方、あるいは今回スクールロイヤーということで、学校をめぐる問題、例えばいじめや不登校、学校事故みたいなものが課題に複雑になる前に、専門家の助言をいただいて早期解決を図ることで、結果的に先生も楽になるし、子どもたちも早く通常の状態に戻るということを期待して、そういった配置も考えているところでございます。
 また、教職員定数の問題、改めて国に対して新たな教職員定数改善計画を早期に策定し、教職員体制の一層の充実を図るよう繰り返し要望しており、今後とも継続的に要望してまいります。

【斉藤委員】
 やはり根本は、教員本体を増やさないと解決できないと。スクールソーシャルワーカーも必要です。カウンセラーもサポートスタッフも必要です。しかし本体の教員を増やさなかったら、今の異常な超過勤務は解決できません。そういう意味で、根本的なところだけ問題提起をいたしました。
 そういう点で、やはりこのプランが響かないのは、そういう危機感と打開の方向が示されていない。あれこれ書いているけれども、根本的な解決策が示されていない。そこに大きな問題があると思います。
 もう1つの重大な欠陥、そして教員を志望しにくくなっているポイントは、給特法です。こんなに超過勤務しながら、超過勤務手当が出ないんだから。これほどブラックな職場はないですよ。いま中教審で給特法の改正が問題になっています。憲法、労働基本法からいったら、超過勤務手当をちゃんと出すということです。それを給特法で「4時間程度の調整手当」にしてしまった。決めたときは根拠あったんです。当時の残業というのは少なく、4時間程度の調整手当で噛み合った。今はとんでもない超過勤務になっていますから、完全にずれてしまっている。本来、教員といえども、超過勤務をしたらきちんと手当が支払われる、それが最大の抑制力になるんです。超過勤務をやったら25%上乗せしなくてはいけない。50時間を超えたら50%ですから、だったら人を増やした方がいいとなる。教員だけはそうならない。やはり給特法というのは、超過勤務手当を払うという方向で改正を求めなくてはならない。
 もう1つ言いたいのは、部活の改善です。改善の手引きも出され、地域への移行もあります。しかしやはりこれは本来の部活動―子どもたちが主役で、自分たちで目標をもち、計画をもち、そこに専門的なアドバイスができるような部活動に改善をするし、手引きが示している週休2日と。これはスポーツ医科学的にも合理性のある話だと思うので、そのあたりの実践状況はどうなのか。

【教職員課総括課長】
 給特法の見直しについては、ご紹介ありましたが給特法の規定により、職務と職務対応の特殊性に鑑みて、超過勤務手当を支給しない代わりに、勤務時間の内外を包括的に評価した処遇として給料の4%、教職調整額として支給することとされておりますが、教職調整額を含めた教師の処遇改善につきまして、中教審の特別部会の緊急提言におきまして、骨太の方針2023におきまして、職務の負荷に応じたメリハリある給与体系の改善を行うということで、給特法の法制的な枠組みを含めて、具体的な制度設計の検討を進め、教師の処遇を抜本的に見直し、今後議論を深めていくと示されていることから、県としては今後とも国の動向を注視してまいりたいと考えております。
【保健体育課総括課長】
 部活動の現状についてございますが、県教委では、これまでの部活動方針を見直し、令和6年1月に「岩手県における学校部活動および新たな地域クラブ活動のあり方に関する方針」を策定し、引き続き部活動休養日および活動時間の徹底を図ることとしております。
 また市町村教委が設置する学校に関わる部活動の方針や、各学校が設定する部活動の活動方針において、県の方針を踏まえた部活動が推進されるよう周知しているところであり、毎年実施している県の保健体育関係行政調査では、各学校において部活動休養日および活動時間は守られている状況でございます。
 スポーツ庁の令和5年度全国体力・運動能力・運動習慣等調査によると、本県公立中学生の1週間あたりの部活動時間は、令和5年度は男子9.5時間、女子9.1時間であり、平成29年度の男子13.9時間、女子14.0時間と比較し、男女とも30%以上減少しているところでございます。
 また、部活動指導員は、平成30年度の導入開始から着実に配置数を増やしており、令和5年度については、1月現在、市町村立中学校は22市町村72校に139名、県立学校には47校103名を配置しているところでございます。

【斉藤委員】
 部活動については、1月に新しい方針が示されたので、ぜひ後でしっかり報告を受けて、独自に議論をできるように委員長にお願いしたい。

・みたけ支援学校高等部のスクールバス問題について

【斉藤委員】
 一般質問で取り上げた県立盛岡みたけ支援学校高等部のスクールバスの実現について、教育長は「この場でいつからということは申し上げられませんが、真摯に検討しております」と含みをもたせました。私はここに一部の望みをかけております。しかし4月から新学期が始まるので、方向性は方向性で出さないといけないのではないかと。
 先ほど、特別支援学校の管理費4億5千万円も減額修正したと。金がないわけじゃない。やる気なんだと思うんです。
 この間の経過の問題点をいいますと、県教委と学校は、高等部の通学バスについて検討したと。第1回、「対応可能と判断して引き続き検討を継続」、これは委託バスの純増ということで。しかし3回目の10月、「対応を見送る」と判断したと。もう10月にはやらないとなっているんです。こんな報告は全然聞いていなかった。なぜこんなことになったのか。
 一関清明支援学校は2台、ひがし支援学校だって1台やっているじゃないですか。なぜ要望があるのに、みたけ支援学校高等部のスクールバスはできないと、もう10月の段階でやってしまったのか。何が課題だったのか、障害だったのか。

【特別支援教育課長】
 委員ご指摘の、10月に通学バスが厳しい状況にあるということは確認をしたところではありますが、それ以外の方法について、生徒の通学を保障するという観点から、さまざまな検討経過、課題を踏まえながら、再度他の方法はないものかというところで、通学支援のあり方も含め検討をしてきていたところでございます。

【斉藤委員】
 通学バスはここでもう早々と断念しているんですよ。なぜひがし支援学校はできて、一関清明支援学校はできて、みたけはできないんですか。来年度22名の高等部の新入生が入るんです。次の年もそういう規模で入ると校長は言っていました。小学部も入学者多いんですよ。小中も1台のバスで間に合うかのかと。「今回あなたは通学バスにならないかもしれません」という連絡まで入っているんです。必要だったら2台にする、高等部もちゃんとやる。なぜみたけはできないと判断したんですか。

【特別支援教育課長】
 通学バスの運行については、厳しい状況ではありましたけれども、代替の方法で何とか子どもたちの通学を保障することはできないかというところで現在も検討しているところですが、盛岡ひがし支援学校との違いをあえて申しますと、みたけ支援学校の小中学部は滝沢市穴口にありまして、高等部は校舎が盛岡市青山ということで、その他のひがし支援学校、一関清明支援学校は小学部中学部高等部同じ校舎で学習を進めておりますので、そこが他の学校とみたけ支援学校高等部の違いととらえて進めているところであり、引き続き通学保障をきちんと守れるように検討を進めてまいりたいと思います。

【斉藤委員】
 新学期を見越して昨年5月22日に保護者の方々が教育長に直訴した。そのときは「一生懸命検討します」と教育長の回答です。みんなこれは大丈夫だと思ったんです。しかし10月に断念したことも我々に示されずに、1月末に突然通学バスはできないと。1名だけ就学奨励制度でタクシー通学にしますと。しかし通学バスを求めていたのは、新しい高等部の入学生だけで5人いた。在校生でも2年生で2人いた。結局通学バスがなかったら、保護者の送迎が65%のなかで、なぜそこにきちんと手立てがとれないのかと。最初に「委託バスの純増、対応可と判断した」と。やったらいいじゃないですか。委託バスの純増なぜできなかったのですか。保護者が求めているのは、行きも帰りもじゃないんです。帰りはほとんどデイサービス利用です。だから「行き」なんです。来年度も新入生増えるんだから。
 教育長、私の一般質問に縦にも横にも首を振らないで、「真摯に検討しております」と。私はここに望みをかけております。決断したら委託バスの純増はできるじゃないですか。それに必要な人員を配置するぐらいの管理費はあるじゃないですか。本当にお金の問題でもない、条件の問題でもない。いま教育長のやる気が問われているんじゃないかと思いますけれども、真摯に検討する中身を示してください。

【教育長】
 一般質問でも答弁申し上げた通り、2回ご要望をいただきまして、我々としても、高等部のみにバスを運行していないことの理由や背景、駅が近い、バス停が近いと。小中でもバスが運行されているのは15校中7校で、8校はバスの運行はない中で、なぜ高等部まで運行していないのかという背景まで調査しながら、真摯に検討してまいりましたが、人員とか時程とか経費もありますけれども、そういった意味で来年度からは難しいということを一旦お示ししている状況です。
 その中で、どうしても通えない子が1名おりますので、4月1日からの対応をなんとかしなければならないということで、こういう方法があるということでお示ししたということであります。
 バスが走ればもちろん乗る方はいっぱい出てくるかもしれませんが、現状で今までも出していないというところもあり、一人ひとり教育相談ということでお話をうかがったところ、「対応可能」というご報告があったということでしたので、まずはお1人対応ということでしたが、その他何らかの方法があるのかどうかということを真剣に調べておりますし、引き続き真摯に検討してまいりますということで、お話させていただきます。