2023年12月12日 12月定例県議会最終本会議
議案に対する質疑
(大要)


【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。議案第24号、2023年度岩手県一般会計補正予算(第5号)について質問します。
 補正予算(第5号)は、国の経済対策に呼応した59億円余の物価高騰対策と国土強靭化対策による公共事業を含め総額442億円余となるものであります。12月県議会に間に合うように提案されたことを評価するものであります。具体的な事業の内容について質問します。

・岩手県物価高騰対策賃上げ支援費について

 第一に、新規で岩手県物価高騰対策賃上げ支援費として21億円が計上されています。
 これは、時給で50円以上賃上げした中小企業者に対し、従業員一人当たり5万円、最大100万円を交付しようとするものであります。全国的にも最も充実した賃上げ支援策であります。
(1)今年度賃上げした事業者数、時給5%以上賃上げした事業者数はどう把握されているでしょうか。
(2)最低賃金が10月4日から時給39円引き上げられました。これによる賃上げが求められている労働者数はどうなっているでしょうか。
(3)今後賃上げする事業者も対象となりますが、どれだけを見込んでいるでしょうか。
(4)申請、交付の時期はどうなるでしょうか。

【商工労働観光部長】
 時給50円以上賃上げした事業所数についてでありますが、本県の最低賃金をベースとすると、50円の賃上げは約6%の賃上げ率に相当するところでございます。また、東京商工リサーチ盛岡支店が9月に公表した賃上げに関するアンケート調査によりますと、令和5年度に賃上げを実施した企業は83.9%となっており、また、6%以上の賃上げをした企業が5%となっております。これを基に、令和3年経済センサス活動調査から、労働者を雇用する事業所が県内に約4万事業所あると想定し、これに5%を乗じて、2000事業所が50円以上の賃上げを行っていると推計しております。
 最低賃金の引き上げへの対応が必要な労働者数についてでありますが、岩手労働局の令和5年最低賃金労働基礎調査によりますと、最低賃金の引き上げ前に、今般の最低賃金額である893円未満で働いていた常用労働者、いわゆる1ヶ月以上の期間で働いている労働者になりますが、これは35533人、全体の21.7%となっております。
 今後賃上げする事業者数の見込みについてでありますが、この事業では、今後も含めて今年度中に賃上げを行う事業者を対象としており、加えまして、来年度への繰越を前提に、令和6年4月以降に賃上げを行う事業者も対象とすることで調整を進めております。今後賃上げをする事業者数の見込みの推計は難しいところではありますが、予算額の積算にあたりましては、先ほど答弁申し上げた2000事業所をベースとし、この2000事業所のすべてが20人の賃上げを行う前提としております。ただし、この中には、20人以下の従業員の事業所も多く含まれておりますことから、今後において賃上げを行う事業者に対しても十分に対応できると考えており、この事業を活用することによって、より多くの事業者における賃上げに結びつけていただきたいと考えております。
 申請・交付の時期についてでありますが、支援金の募集にあたりましては、運営業務の委託を予定しており、委託先の選定および契約締結におおむね1ヶ月程度を要し、その後委託業者による事務局体制の構築等におおむね2週間程度を要すると見込まれますが、県のホームページや商工関係団体等を通じた情報提供を速やかに開始し、事業者への迅速な支援に努めてまいりたいと考えております。

・中小企業等事業継続緊急支援金支給事業費について

【斉藤議員】
 第二に、中小企業等事業継続緊急支援金支給事業費について質問します。
(1)今回の補正予算には、4月の補正予算(第1号)で措置した10億1384億円余の事業を超えて申請があり、1憶1332万円余の補正が計上されています。物価高騰対策というなら、物価高騰で困っている事業者への支援も切実で緊急な課題であります。これまで継続して実施してきた中小企業等事業継続緊急支援金の実績を示してください。
(2)今年度実施の中小企業等事業継続支援金支給事業費には、盛岡市をはじめ9市町が上乗せ補助を実施しています。奥州市、大船渡市、陸前高田市は県と同額を上乗せ支援します。9市町の上乗せ支援金の額はどう推計されるでしょうか。
(3)中小企業等事業継続緊急支援金は、事業者の要望も高く、幅広い事業者が対象となり、9市町の上乗せを含め大きな効果を上げています。この事業は市町村との連携をさらに強化し、継続実施されるべきではないでしょうか。

【商工労働観光部長】
 実績についてでありますが、令和4年10月から本年3月を対象期間とした第1弾では、10735事業所に対して11億4555万円の交付を行ったところです。また、本年4月から9月を対象期間とする第2弾は、申請期間を11月30日までとしており、11月24日時点で8025事業者から8億7030万円の申請がなされ、このうち6427事業者に対しまして6億9810万円を交付しております。
 9市町による上乗せ支援額についてでありますが、9市町のうち7市が県事業の受給者を対象としており、県における支給事業者数をベースに単純に積算いたしますと、約4億2300万円となるところでございます。また、2町におきましては、独自の基準を設けて事業実施しているところでございまして、これら2町の実績額を合算いたしますと、約4億5500万円となるところでございます。
 支援金事業の継続についてでありますが、中小企業者等事業継続緊急支援金は、エネルギー価格・物価高騰等の影響を受ける中小小規模事業者の緊急的な支援制度として、これまで2回にわたって実施し、これを活用いただくことで事業者の事業継続を図ってきたところでございます。県と商工団体が連携して実施している事業者影響調査におきましても、賃上げへの対応を課題とする事業者が増えており、また、人材確保と賃上げ対応に苦慮し、賃上げをしなければ人材が首都圏等に流出してしまう、大企業にばかり人が集まってしまうといった声を直接多くの方々からいただいているところでございます。さらに、本県は全国よりも賃上げを実施する企業の割合が低いとする民間調査結果もあると認識しております。このため、今般県内中小企業者の賃上げを促進する施策を強化することとし、これまでの事業継続緊急支援金に代えて、物価高騰対策賃上げ支援費を補正予算案として提案したものでございます。

・バス、タクシー事業者等への支援について

【斉藤議員】
 第三に、バス、タクシー、貸し切りバス事業者への支援費も計上されています。
 基本的には前期の物価高騰対策を継続実施するものです。前期の実績、それぞれの経営状況と今回の支援費の必要性を示して下さい。

【ふるさと振興部長】
 運行支援緊急対策交付金の前期の実績についてでありますが、乗り合いバス事業者3者に対して合計1億3900万円余、またタクシーについては、207事業者に対して合計5400万円余を交付したところであります。
 それぞれの経営状況についてでございますが、乗り合いバス事業者3者について、令和5年4月から9月までの運賃収入は21億9900万円余と、令和元年同期比で22.2%の減となっております。また、タクシーについては、岩手県タクシー協会によりますと、令和5年4月から9月までの運賃収入は40億6500万円余と、令和元年同期比で11.7%の減となっております。
 こうした状況を踏まえつつ、燃料費高騰が続いている状況も勘案し、地域の移動手段を維持・確保するための支援として、上半期と同様に下半期分の交付金を交付するための費用につきまして、本補正予算案により措置しようとするものでございます。
【商工労働観光部長】
 貸し切りバス事業者への支援についてでありますが、今年度前期分の実績として、交付申請のあった貸し切りバス事業者57者に対しまして、1台あたり4万円、566台分、合計2264万円を交付しております。
 貸し切りバス事業者の経営状況に関するデータは、県およびバス協会においても持ち合わせていないところでございますが、軽油価格等の高騰が長引いていることに加えまして、人手不足なども加わり、引き続き厳しい状況にあると受け止めております。
 こうした状況も勘案し、県内観光の二次交通の要である貸し切りバスにおける旅客輸送の安全・安定した運行の維持を図るための支援として、前期と同様に後期分の交付金を交付するための費用について、本補正予算案より措置しようとするものでございます。

・LPガス価格高騰対策費について

【斉藤議員】
 第四に、LPガス価格高騰対策費として8億7698万円余が計上されています。
(1)前期の取り組みと実績を示してください。
(2)今回は、一般家庭等への値引き額は、1契約当たり定額2000円の値引きとなっています。その理由と値引き実施の時期を示してください。

【復興防災部長】
 補正予算第1号で措置したLPガス価格高騰対策費についてでありますが、この事業は、小売り事業者を通じた一般家庭等への支援と、工業用LPガスを使用する中小企業者への支援となっていますが、一般家庭等への支援については、5月のガス使用量に応じた3区分で、9月検針分の請求から値引きしたところです。その実績は、LPガスを使用している世帯等の約97%、35万4000件余が対象となり、県全体の値引き額は9億円余と見込んでいます。また、工業用LPガスを使用する中小企業者への支援については、本年4月から9月までの購入量について、1立方メートルあたり37円を支援するもので、6事業者から申請があり、支援額は約2000万円と見込んでいます。
 今回の一般家庭等への支援についてでありますが、今回は小売り事業者が冬季の繁忙期を迎えている中、物価高騰対策として速やかな事業実施が必要であることから、小売り事業者の事務負担を軽減するため、1契約あたりの値引き額を、これまでの3区分から一律2000円としたところです。本県の家庭用LPガスの10立方メートルの小売り価格は、比較的価格が安定していた令和2年12月の9072円から、令和5年8月の10197円と、一月あたり1125円、6ヶ月分で6750円値上がりしています。国が都市ガス料金の支援の延長にあたり、支援額を値上がり額の約4分の1としたところです。こうした国の支援状況を踏まえ、今回の値引き額については6ヶ月分の値上がり額6750円の4分の1である1687円に、冬期間にガス使用量が増加することを加味し2000円としたものです。値引きは原則として2月検針分の請求時に実施する予定としています。

・社会福祉施設、医療施設に対する支援について

【斉藤議員】
 第五に、社会福祉施設等物価高騰対策緊急対策支援費は5億7千万円余、医療施設等物価高騰対策緊急対策支援費に4億9百万円余計上されています。
(1)前期(1号補正)の実績を示してください。対象施設数を含めて示してください。
(2)今回の補正では、前期より増額されています、その理由と社会福祉施設、医療施設の物価高騰の影響・現状について示してください。
(3)今後の申請、交付の見通しを示してください。

【保健福祉部長】
 社会福祉施設および医療施設等物価高騰緊急対策支援費の上半期実績についてでありますが、支給決定額は5億5000万円余、支給決定を行ったのは5224事業所であり、対象事業所数を6538事業所と見込んでおりましたが、申請率は約8割であったところです。また、支援金の支給については、7月上旬から順次手続きを開始し、9月末までにすべての支給を終えております。
 支援金の増額理由と物価高騰の影響・現状についてでありますが、支援金については、光熱費のほか、今回新たに食材料費を支援対象に加えるため増額しようとするものであります。また、光熱費等の高騰が依然として続いているなか、社会福祉施設や医療施設は、診療報酬や介護報酬などの公定価格により運営されているため、高騰分を価格に転嫁することができず、経営努力のみでは対応が困難であると認識をしており、物価高騰への支援について関係団体からもご要望をいただいているところであります。
 今後の申請・交付の見通しについてでありますが、対象事業所数が非常に多いことから、支給事務については前回と同様に外部への委託を予定しておりますが、できるだけ早期に支給が開始できるよう、議決いただいたのち速やかに手続きを進めたいと考えており、最短で1月上旬に申請受付の開始を見込んでいるところであります。

・ツキノワグマ被害防止対策事業費について

【斉藤議員】
 第六に、ツキノワグマ被害防止対策事業費として571万円余計上されています。ツキノワグマ被害の状況と今回の対策事業費の具体的内容を示してください。

【環境生活部長】
 今年度のツキノワグマによる人的被害は、昨日時点で49人となっており、このうち2人は、例年であればほぼ被害がなくなる12月に入ってから被害にあっておられます。
 人と熊の適正な共存関係を構築するためには、熊を保護するゾーンと人の活動を優先するゾーン、その間に緩衝地帯とするゾーンを設定することが有効とされております。
 今回の補正予算案に計上したツキノワグマ被害防止対策事業は、センサーカメラや電気柵を市町村に無償貸与することで、各市町村がゾーニングに着手することを側面支援するとともに、冬眠明けの春期捕獲について、1頭あたり8000円の経費支援を行うことで確実に実施し、熊が保護ゾーンにとどまることを促そうとするものでございます。

・公共事業費について

【斉藤議員】
 第七に、県土整備分の公共事業費が210億円余計上されています。
(1)これ等の事業はどのように発注、事業化されるのでしょうか。昨年度の実績を含め示してください。
(2)平成28年台風10号関連の小本川の河川改修事業費に34億1000万円が新規で計上されています。これまでの事業の進捗状況と完了の見込みはどうなっているでしょうか。

【県土整備部長】
 事業の発注等についてでありますが、県では、今回の国の補正予算を受け、防災・減災、国土強靱化に資する取り組みの早期効果発現に向け、発注・契約を早期に行うことができるよう準備や調整を進めているところです。
 昨年度の実績としましては、防災・減災、国土強靱化のための5カ年加速化対策にかかる補正予算について、直轄事業を除く県土整備部所管事業における令和4年度内の発注契約は、入札公告を行ったものも含め、おおむね3分の2となったところです。今年度の補正予算についても、昨年度の実績を上回ることができるよう、早期の発注・契約に向けて取り組んでまいります。
 平成28年台風第10号関連事業の進捗状況と完了の見込みについてですが、小本川の河川激甚災害対策特別緊急事業については、全8地区で整備を進めてきたところであり、令和5年度末までに宮本地区と中里地区の2地区が完成する予定です。今回の補正予算案では、事業費として34億1千万円を計上し、河道掘削や堤防整備等を進め、令和6年度末に全地区の完成を見込んでおります。

<再質問>

・賃上げ支援について

【斉藤議員】
 物価高騰対策賃上げ支援費なんですけれども、これは本当に全体として全国に誇る対策だと評価をいたします。
 先ほどの答弁で、今年度賃上げした事業者数が83.9%と。これは東京商工リサーチ盛岡支店の試算なんですね。これは87者の調査なんですよ。私はかなり高めにでているのではないかと思います。
 先ほどの答弁では、来年度の春闘で賃上げするところも対象だということになると、この予算で間に合うのかというのが率直な疑問であります。
 最低賃金が39円引き上げられたことによって、30533人がただちに賃上げが求められているということです。ですから、この数はかなり大きい比率を占めるのではないかと思いますが、この最低賃金の引き上げによって5%上げるという可能性もかなり高いのではないか。その辺をどう見ているのか。

【商工労働観光部長】
 今後の賃上げ予定の関係でございますけれども、現在来年度の春闘とかで賃上げをした事業所も対象とする方向で調整を進めているところでございますけれども、その予算額につきましては、先ほど答弁申し上げましたように、今回の最低賃金による影響を受けております3万という数字も出ておりますけれども、従業員規模が比較的小さいところも多数含まれていますので、最大限20人分上げるという形で組んでおりますので、そういう執行状況を見据えれば十分に対応できるのではないかと。2回はもらえませんので、今年度分と来年度分にはなりませんので、そこは十分に対応できるのではないかと考えております。

・中小企業者等事業継続緊急支援金について

【斉藤議員】
 11月24日段階で8025件でありました。このときに、実は大船渡商工会議所関係は670件でしたが、12月3日の東海新報によりますと、11月末段階で785件になっていると。17%上がっているんですよ。だからかなり11月末まででさらに大幅に増えるのではないかと。その点で、補正予算の見込みで試算した見込み数というのはいくらになるのか。
 今日の岩手日報に、盛岡財務事務所の景況調査の報道があります。「県内景況は3期ぶりに下降」と。「消費回復が頭打ちに」「前回調査から11.7ポイント悪化した」と。これはBSI(景況判断指数)の指標ですね。だから今景況は急速に悪化している。そして今後の見通しでいいますと、1月から3月の見通しですけれども、全産業でさらに-10.6%悪化するというのが、県内景況の直近の分析です。だから中小零細企業をめぐる状況というのは大変厳しい状況で、だから私は11月30日締切の事業継続緊急支援金の申請が急速に高まったと思うんです。10月段階で4000件だったものが11月24日で8000件になって、おそらく9000件を超える、1万件近いところまでいくのではないか。こうした中で、本当に困っている方々、岩手県の事業所調査でも、資材高・物価高の影響を受けているというのが一番大きいんです。そこに対する手立てをとらないと賃上げどころじゃないのではないか。
 知事にお聞きしますが、この事業継続緊急支援金が積極的に活用されたと。さらに状況は厳しくなっていると。こうした中で、私は中小企業者等事業継続緊急支援金というのは、ぜひ市町村と連携して、1.5倍の効果をあげていますから、実施すべきではないかと思いますがいかがでしょうか。

【達増知事】
 中小企業者等事業継続緊急支援金について、さまざま効果はあると思っておりますけれども、賃上げ支援と物価高騰対策はその効果が相互に発現されるもので、限られた財源を有効に活用して、今回中小・小規模事業者の賃上げを直接的に支援し、その負担軽減を図ることによって、この事業継続も支えていきたいと考えているところであります。
 国際情勢を背景としたエネルギー・原材料価格の高騰に端を発した物価高騰はいまだ継続しており、今後その推移は、議員ご指摘の通り予断を許さないところでありますので、物価高騰対策という視点も持ちながら、今回は賃上げ支援という形で対策を講じたいというものであります。
【商工労働観光部長】
 事業継続緊急支援金の予算額ですけれども、我々といたしましても後半の方で伸びていると、申請期限を控えて多くの事業者さんに申請いただいているというようなことがございまして、こういう傾向が第1弾のときにもございましたので、申請状況と第1弾の実施の際の申請の傾向等を加味したうえで、所要額を試算いたしまして、現行の予算額を上回るのではないかということで、今般1億1132万円余の補正予算案を計上したところでございます。