2023年10月18日 文教委員会
令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等調査結果に対する質疑
(大要)


・県の調査データについて

【斉藤委員】
 最初に、この県の調査結果、あまりにも簡潔なもので、これが全国の調査報告書なんですが、これに関わっても岩手の問題はたくさんあるわけだから、もうちょっと充実したものにならないかと。
 例えば、不登校の要因というのが全国の調査では書かれています。不正確だけれども書かれています。あとは「どの機関にも相談していない」38.2%と出ていますよね。これは県のデータも出るはずなんですよ。全国の集計で出ているわけだから。そういうものが出ていないと。
 そういう意味で、そういうことはきちんとした議会への資料で出せないものか。

【生徒指導課長】
 県の調査結果についてでございますけれども、児童生徒の問題行動・不登校等、生徒指導上の諸課題に関する調査の結果につきましては、文部科学省が公表している以上のデータをお示しすることはできないものとなってございます。
 県教育委員会としましても、特にも注視している「暴力行為「いじめ」「長期欠席」「中途退学」の項目については、経年変化を示すとともに、各市町村教育委員会が各学校の指導に役立つデータを提供しているところでございます。

【斉藤委員】
 例えば、新聞等でもかなり問題になったのは、「どの機関にも相談できていない」38.2%、約4割ということで、これを放置していいのかというのがどこでも問題になりました。これは全国集計で出ているけれども、岩手の場合のデータは出ないんですか。

【生徒指導課長】
 岩手のデータということで、公表されていない状況でございますので、今回お伝えできないという状況でございます。ただし、こういった相談につながっていないという子どもたちは多く、非常に取り組むべき内容だと認識してございまして、さまざまな関係者と連携しながら指導・支援につながっていけるように取り組んでまいりたいと考えております。

【斉藤委員】
 公表されていないけれども、データとしてはあるということですか。そもそもデータはないということですか。都道府県の調査結果の積み上げだと思うけれども。

【生徒指導課長】
 都道府県の報告を行う際は、公立については、教育委員会の方で取りまとめて県の方に報告、文部科学省の方に報告しているという本調査でございます。

【斉藤委員】
 県教委の調査の分は分かるということですね。公表できないという話はないんだと思うけれども。

・いじめ重大事態について

【斉藤委員】
 それで、先ほど小西さんの質問にもありましたけれども、いじめ重大事態について、いじめの問題は全体として深刻だけれども、昨年は20件でした。今年度の公表では15件でした。命に関わる1号、長期の不登校に陥った―これは2号ですね。先ほど1号・2号が10件・8件という話でありました。これは小中高で分かるんですか。

【生徒指導課長】
 重大事態15件はその通りでございまして、第1号重大事態と呼ばれる「児童生徒の生命・心身・財産への重大な被害にかかるもの」が10件、第2号重大事態と呼ばれる「相当の期間の欠席にかかるもの」が8件報告されているところでございます。先ほど申しました通り、重複している事案もございます。この重大事態15件につきまして、県立の学校で発生している重大事態件数は5件となっておりますけれども、小学校・中学校につきましては公表になってございません。残りの10件につきましては、県立学校以外の国立・市町村立・私立という捉えになります。

【斉藤委員】
 命に関わるいじめ、そして長期の不登校に陥ったいじめ、これは本当にきわめて重要な問題で、これはいじめ防止法に基づいて実態調査、そして再発防止策を示すとなっています。だから、県内でどういう重大事態が発生して、その教訓を全体に明らかにしていくと。そのことが重要なのではないかと思いますが、まず前年度の20件、この20件のうち元の学校に戻れたという件数はいくつあるのか。昨年度分の15件についてはどのぐらい元の学校に戻れたのか分かりますか。

【生徒指導課長】
 その後の追跡というところでは、この重大事態、全体を把握していないところではございます。ただし、各学校においてさまざま被害児童生徒・保護者に寄り添いながら支援をしているというところでございます。

【斉藤委員】
 事故報告書出された2件だけ、この15件のうちいただきました。読ませていただきました。その1件は、いじめ行為に起因する、これは不登校の関係なんですけれども、結果的に転学ですよ。実態調査をやっていじめの事態が明らかになって、再発防止を出していても、結果は転学、戻れなかったと。こういうことだと解決にならないわけですよね。調査に時間がかかる。だいたいいじめが発生してから、例えば不登校の場合、3ヶ月経ってから、重大事態になってから調査、これは1ヶ月ですかね。それから重大事態になって、さらに新たな調査をやるみたいな、こういう形になって、本当に問題を解決して、戻せるものは戻すということになっていない。
 重大事態については、去年の公表が20件、今年15件ですけれども、県のいじめ対策委員会ありますが、いじめの連絡協議会もあります。こういうところにしっかりこの調査報告書、独自に調査をしている件数もあると思うんですけれども、やはりしっかり把握して、返すものは返すと。重大事態にかかる調査の指針・ガイドラインでは、「特段の指標がなければ公表することが望ましい」となっているんですよ。しかし重大事態が発生したかも分からないのが今の実態ですよ。そういう問題をしっかり全体の教訓にするということが大事なのではないでしょうか。

【生徒指導課長】
 教育委員会といたしましても、重大事態という部分、大変取り組まなければならないことだと認識してございます。県教育委員会としましても、いじめ重大事態に対し、法や基本方針、ガイドラインに沿った対応をすること、被害児童生徒・保護者にしっかり寄り添うこと、そして組織的に対応していく、これが何より大事だと認識してございます。解決に向けて学校を支援するとともに、被害生徒一人ひとりに寄り添った取り組みをしてまいりたいと考えてございます。

【斉藤委員】
 手引きにあるように、やはり特段の支障がなければ、公表できる中身は公表すると。なぜ重大事態に陥ったのか。だいたい初動の対応の遅れですよ。初動の問題が大事だったということが触れられていますけれども、そういう具体的な事実に対して、どういう対応が問題だったのか、その背景は何なのか、積極的に公表して全体の教訓にしていくべきだと思います。いじめは急増しているわけですから。

・不登校の問題について

【斉藤委員】
 2つめに不登校の問題についてお聞きをいたします。
 実はこの不登校が21年22年と、全国的に見ても5万人ずつ増えているんですよ。本当に急増というべき状態で、これは岩手県内でも同じ状況であります。小学校は5年間で見ると2.17倍、中学校は1.41倍に増えています。この2年間急増した要因・背景をどのように受け止めていますか。

【生徒指導課長】
 不登校が急増している要因についてでございますけれども、長期化するコロナ禍による生活環境の変化により、生活リズムが乱れやすい状況が続いたことが、学校生活においてさまざまな制限がある中で交友関係を築くことが難しかったことなど、登校する意欲が湧きにくい状況にあったことなども要因として考えているところでございます。

【斉藤委員】
 今の説明は、要因・背景の1つだと思うけれども、この急増はそれだけでは説明がつかない。この5年間急増の傾向があって、この2年間急増したということですから、しっかりこの要因を分析する必要があるのではないか。不登校の要因について、この実態調査結果ではどのように分析され、そしてこれは文科省の調査機関でありますけれども、不登校児童生徒に直接聞いた実態把握調査との分析と乖離があると、これは去年の文科省の不登校の調査研究協力者会議の報告でも指摘されているんですけれども、どういう中身でしょうか。

【生徒指導課長】
 不登校児童生徒の実態把握に関する調査についてでございますけれども、令和2年度の調査で、不登校児童生徒のさらなる支援の充実について検討する旨の基礎資料とすることを趣旨として、小学校6年生・中学校2年生の児童生徒を対象に行われたものであり、児童生徒・保護者あわせて約4000件の回答があったものと認識してございます。
 当該調査の結果によりますと、最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけに対する回答では、小学校では「先生のこと」「身体の不調」「生活リズムの乱れ」で高い割合となってございます。中学校では「身体の不調」「勉強が分からない」「先生のこと」で高い割合となってございます。また、小学校・中学校の2割強が「きっかけが何か自分でもよく分からない」と回答していると承知してございます。

【斉藤委員】
 この全国実態調査結果ではどのようになっているかというと、学校側の評価なんですね。「無気力」「不安」というのが51.8%、「生活リズムの乱れ」が15.9%、「友人関係」が9.2%、学校の評価と子どもたちに聞いた結果というのは大きな乖離があると。これは文科省自身が認めていることです。子どもたちの立場にたって要因というのが解明されていないと、結局「無気力」「不安」というのは子どもに責任があるという立場なんですよ。こういう立場だったら、これだけ急増している不登校の原因、そして解決にもならないと思うけれどもいかがですか。

【生徒指導課長】
 この不登校の要因に関することについてですが、文部科学省からは、不登校の要因に関する実態調査などを行い、令和5年度の調査において、不登校の要因において「無気力」だとか「不安」といった主たる要因とした児童生徒に関し、学校が把握する状況を計上する調査項目を新たに設けるという調査内容の見通しも検討していると聞いてございます。
 やはり子どもたち一人ひとりの要因について、きめ細かに分析していくということが重要であると思ってございまして、国の動向を注視しているところでございます。

【斉藤委員】
 やはり子どもの立場に立って、子どもの声をしっかり聞いて、不登校の解決に取り組むべきだと。先ほど紹介された実態調査では、小学校では「先生のこと」、中学校では2番目に「勉強がよく分からない」と、学校の問題が最大の要因になっているんですよ。
 国連子どもの権利委員会の勧告が2019年に出ましたが、ここでは「社会の競争的な性格により、子ども時代と発達が害されることなく、子どもがその子ども時代を享受することを確保するための措置をとること」と。「競争的な社会」ということが初めて指摘をされました。その上で、「あまりにも競争的なシステムを含むストレスフルな学校環境から子どもを解放する措置を強化すること」と。いわば学校がストレスフルになっていると。ストレスを子どもたちに与えていると。そこを解放すべきだというのが、政府の報告書、国内の民間の団体の報告書を踏まえた国連の政府に対する勧告です。
 生徒の指導提要が昨年12月にかなり抜本的に改定されて、この中には、子どもの権利条約、子ども基本法、この精神を徹底させることが重要だとも指摘されているけれども、子どもの権利条約の政府勧告をどのように受け止めていますか。

【生徒指導課長】
 国連の子どもの権利委員会の勧告の受け止めについてでございますけれども、社会性を身に付ける途上にある児童生徒が集団で活動する場合には、しばしば対人的なストレスのほか悩みや緊張などのストレスなどの発生の側面もあるということを承知しております。不登校やいじめなどの生徒指導上の課題に対する未然防止の取り組みとして、学校においては児童生徒一人ひとりの特性や学びの状況により適した指導方法を考えるとともに、児童生徒が安心して自己存在感、充実感が感じられる居場所づくりの取り組みや全ての児童生徒が主体的に取り組む活動を通し、自らが絆を感じ取り紡いでいく絆づくりの取り組みを継続して進めていくことが重要であると認識してございます。

【斉藤委員】
 個々の対策も大事なんだけれども、国連子どもの権利委員会の勧告は、競争的な社会、極度に競争的なシステムが子どもにストレスを与えていると。それが暴力とかいじめとか不登校とか自殺に表れていると。こういう厳しい指摘なんですよ。そういう根本問題をしっかり受け止めて対応することが必要なのではないか。
 競争的な教育システムの中心は学力テストです。安倍内閣が復活させた学力テスト以降に不登校が急増しているというのも一つの明確な事実です。
 それで具体的な問題として、約4割の不登校の子どもがどの機関にも相談していなかったと。この解決は急務だと。文科省の不登校対策の中でも、児童生徒理解教育支援シートをしっかり整備して対応することが大事だと。不登校の子どもたちへのこういうシート、カルテといってもいいでしょう。こういうものをしっかりやって、学校の側からもしっかり相談機関を紹介したり、アウトリーチもするし、そういうことが一人残らずシートが整理される必要があるのではないかと思いますがいかがですか。

【生徒指導課長】
 令和4年度の本調査によりますと、全国の小中学校における不登校児童生徒のうち、学校内外で相談・指導を受けていない児童生徒は38.2%となっており、本県でも一定数そのような児童生徒がいることは承知しいているところでございます。
 今お話がありましたシートの活用につきましても非常に重要であると認識しておりまして、この活用に対しましては、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの専門職、専門の力を借りたり、一人一台端末を利用した心の相談の運用により、早期のSOSの発見につなげたり、教育支援センターのさらなる開設による相談支援体制の強化、国・民間団体との連携会議の開催などに取り組んでまいりたいと考えております。

【斉藤委員】
 私が指摘した児童生徒理解教育支援シートというのは、活用されているんですか、されていないんですか。

【生徒指導課長】
 シートでございますけれども、活用について実態の具体的な数値は把握していないところではございます。ただし、各学校においてこの様式を基本としながら、学校あるいは市町村教委単位で様式を定めて取り組んでいるということも聞いてございます。一人ひとりの実態、関係機関との連携等がこのシートでまとまっていくということで、非常に有効であると思ってございます。今後もその仕様と促進に努めてまいりたいと考えております。

【斉藤委員】
 私もいろいろ不登校に関する文書を見たけれど、このように指摘されている、提起されていることについて真剣に取り組む必要があるのではないでしょうか。本当に一人残らず、休養が必要な子どもたちもいる、不登校にもいろんな対応の仕方があると思うけれども、そういう状況を、例えば担任が変わっても継続すると。不登校の親の会のレポートには、「学校に行けなかったけれども毎月1回担任の先生が声をかけてくれた」ということが、学校に対する信頼になって、中学校になったら学校に行けたということがあるんですよ。これは即効性のある対策ではないけれども、やはり見捨てていない、大事にしていると。共感すると。そういう働きかけというのが必要なのではないかと。
 もちろん教員の多忙化がありますから、この障害を打開するということが前提・土台になるけれども、そういうことで一人残らず不登校についても見守る、支援する。そして親も困っていますから、相談していないということは親も相談に関わっていないんですよ。親も含めて相談機関を紹介したり、親の会の中で活動したりということも大変大事なことだと。

・自殺の問題について

【斉藤委員】
 最後に自殺の問題についてお聞きをします。
 この全国の調査では、子どもの自殺は全国411人、前年が368人ですから、自殺も増えています。国連子どもの権利委員会の勧告では、「子どもの自殺の根本原因に関する調査を行い、防止措置を実施すること」と指摘をされております。本当に子どもたちが命を絶つというのは深刻な問題ですから、何が原因・要因でそういう自殺になっているのか。これは数じゃなくて、原因・要因をしっかりつかんで自殺を防止していく取り組みが必要だと思いますけれどもいかがですか。

【生徒指導課長】
 子どもの自殺の根本原因に関する調査についてでございますけれども、児童生徒の自殺については、すべての事案について背景調査を行うこととしてございます。背景調査は、その後の自殺予防に資する観点から、万が一子どもの自殺または自殺が疑われる指導案件が起きたときに、学校および設置者が主体的に行う必要がある調査でございます。調査結果が、自殺または自殺が疑われる指導事案について、事故発生後速やかに着手するということを大切にしながら進めているところでございます。

【斉藤委員】
 いじめにしても自殺にしても、本当に原因・要因をしっかり把握して、そして今後の対策に生かすというのは本当に大事なことですから、やはり調べることはしっかり調べて明らかにして、そしてそれに対応する対策を全体に明らかにしてやっていただきたい。
 最後に教育長、今回の調査結果をどうとらえて取り組もうとしているか聞いて終わります。

【教育長】
 いじめにつきましても不登校につきましても、全国的にも本県でも、解決すべき重要な課題と考えてございます。
 いじめにつきましては、件数は増えてございますが、本県としては早期に発見しましょうということで、隠すことなくということで、早期にこれを上げているという結果もあろうかと思いますので、この増が一概に問題なのかということではないと思いますが、ただいずれにせよいじめがあり、そしてその中には重大事案があるということでございます。特に重大事案については、これもそうならないように、早期に子どもたちに寄り添う、あるいは保護者の理解も得ながら早期に解決に導いていくということが大事だと思っておりますし、不登校につきましては、さまざまな背景・要因があり、委員からは子どもの目線に立った要因分析をというお話もいただきましたが、これもとにかく早め早めに察知し取り組むこととして、学校も一生懸命対応しております。特にも、いま担任一人に任せるのではなくて、チーム学校ということで、管理職以下、そしてそこにはスクールソーシャルワーカーだったりカウンセラーに入っていただいたり、他の機関にも相談したりとか、教育委員会内にもそれぞれそういうことを専門にする職員もおりますので、そういうところが一緒になって対策を講じると。あるいは市町村でも教育支援センターを拡充していく、充実させると。それからフリースクールとも連携していくというようなこと、総力をあげて総がかりでやっていかなければ、この大きな問題に対応しきれないと考えておりますので、そういうことで関係機関とも一緒になって取り組んでまいります。