2022年10月13日 文教委員会
不来方高校バレー部員自死事件に関する質疑
(大要)


【斉藤委員】
 それでは私は、不来方高校におけるバレー部員自死事件に関わって、県教委の対応について今日は立ち入って質問したいと思います。
 6月24日に、元顧問教師に対する免職処分と、退職金不支給の処分が出ました。不服申し立てがされたと聞いておりますけれども、今後のプロセスはどのようになるのでしょうか。

【教育局長】
 まず、処分に対する不服申し立ての件でございますが、この個別の申し立てに関する事案につきまして、公開されている情報でございませんので、県教委としましては、現時点で申し立ての有無についてお答えできる状況ではございません。
 なお、制度上のことを説明させていただきますと、県教育委員会が行った処分に対する不服申し立てにつきまして、まず、懲戒処分につきましては人事委員会、退職手当支給制限処分については知事が審議・手続きを主催することとなりますので、県教育委員会では、仮にこの申し立てがあったとすれば、処分長として見解を主張し、その後の審議に対応していくということになります。

【斉藤委員】
 この処分に対する不服申し立ては大変残念であります。この間の経過を見ますと、この元顧問教師は、訴えられた暴言・暴力について一貫して否定していました。それで刑事告訴、その後は民事の訴訟となったわけですけれども、この民事の訴訟をやるときにですね、これは県教委もう1回確認した。暴力・暴言がなかったか。「ない」ということで応訴したんですね。ところが第一審の裁判の中で、元バレー部員の証言が出て、県教委がそのことを調査をして体罰があったことが明らかになった。それで前言を翻して一部体罰を認めるという形で裁判は経過した。いわば一貫して不誠実で虚偽の報告をしてきた。本当にこれは許されないと思います。
 そこで、私は県教委の対応にも本当に重大な問題があったのではないかと思いますが、盛岡一高事件の検証はどこまでいっているでしょうか。

【教育局長】
 前任校における事案の検証状況についてのお尋ねでございますが、いま現在、再発防止岩手モデル策定委員会を立ち上げて会議を設けておりますが、その中で人事管理検討部会という部会を設置してございます。そこにおきまして、外部委員の参画をいただきながら、理由の解明、なぜこういった事態になったのかということ、学校・県教委含めての解明ですが、この調査・検討を進めてございます。
 先日9月19日に第7回の委員会を開催しましたが、外部委員から、要項にありました学校および県教育委員会関係者の再聴取、これ一度ヒアリング等を行っていますが、その再聴取の状況について報告を行い、また、その場でさらにいただいたご意見を踏まえながら、さらなる確認作業をしていると。いろいろと聴取の方法とか内容とか、いろいろご意見が出ていますので、その辺の確認作業をしていると。
 前任校での事案を含めまして、確認された事実につきましては、外部委員と共有のうえ、当時の学校および県教育委員会における対応状況等を改めて整理しまして、再発防止の検討につなげていこうとしているところでございます。

【斉藤委員】
 一審の裁判でも、特に二審の高裁では、この元顧問教師による一高における暴力・暴言が恒常的だったと。きわめて過酷だったということが陳述書で明らかにされました。この陳述書について、県教委は反論しませんでした。証拠採用されましたが、なぜ反論しなかったのですか。認めたのですか。

【教育局長】
 陳述書に関するお尋ねでございます。
 陳述書が出された経緯から若干ご説明させていただきたいと思うんですが、この当該陳述書は、元顧問教諭の在任勤務時に、バレーボール部に所属していた部員が作成したもので、平成30年6月1日付で控訴人側弁護士から仙台高裁に提出され、6月4日、副本が県に到達しております。この陳述書について、控訴審判決で、2学年後輩の当該元部員の元顧問教諭のバレー部員に対する平手打ちする場を目撃し、自ら受けたと陳述していると、この陳述書について記載しております。ただ、この裁判におきましては、被害生徒や控訴人側が申し出た当該元部員への証人尋問については、裁判長が証人尋問は必要ないということで、請求が却下されています。
 そういったことも含めまして、今回の懲戒免職処分を実施するにあたりましては、元顧問教諭に当該陳述書の内容についても聴取し、同様の行為による処分歴を踏まえて、前任校赴任時までさかのぼり、類似の行為がなかったか、バレーボール部の元部員に調査協力を求めて、強力に動いてくれた者から事実関係の確認を行いました。当該陳述書の内容につきまして、作成した元部員に聞き取りができたものの、それ以外の元部員から得られた証言の中で、陳述書の内容と一致するものが得られなかったことから、最終的に事実として我々認定するまでに至らなかったというのが陳述書に関する取り扱いの経過でございます。

【斉藤委員】
 この経過を聞いて驚きました。本当に克明な陳述書なんですよ。例えば、私は何度も言っているけれども、いつどこでどういう暴力があったかということを陳述しているんですよ。例えば、被害者の同学年に対する暴力、これは証言者が1年生のときです。「ゴールデンウィークのときに青森の合宿に行って、練習試合の試合内容が思わしくなかったところ、円陣を組んだ際、佐々木先生はTさん(実名記載)という3年生の顔を何発もビンタしました。私は中学校・高校を通じて、部活中に先生から暴力を受けるのを見たのは始めてだったので、すごく衝撃を受けたのを覚えています」と。同学年の暴力の事実ですけれども、平成22年秋頃、「遠征先の青森工業高校において、同級生のM君は、佐々木先生から髪をつかまれた上で、体ごと壁に投げつけられて、壁に激突させられるという暴行を受けていました。私が体験した暴力の中でも、特にひどいものの1つだったのでよく覚えています」と。後輩についても書いているんですね。「後輩を引っ張って、壁際に投げつけるようにして立たせ、その後30分ぐらい、繰り返し繰り返し怒鳴りながら平手打ちをしていました」と。いいですか、いつどこでどういう暴力・暴言があったかという陳述なんですよ。なんでこれが確認できないんですか。確認したくなかったということではないですか。
 それで、あなた方は再調査の中で、この陳述書の内容について元顧問に確認をしました。元顧問の回答は陳述書の記載内容について「分からない、記憶がない」と回答した。否定できなかったんです。これきわめて重大ですよ、当事者ですから。これ事実上認めたということじゃないですか。あなた方は、当事者が否定できなかった事実、これをなぜ事実として認めないんですか。やった人が否定できなかった。
 もう1つ、「7人の元部員の方々から陳述書の内容と一致する証言が得られなかった」と言っています。否定した事実はありましたか。元部員で、陳述した具体的な例について、そういうことはなかったと、そういう陳述はありましたか。

【教育局長】
 顧問教諭からの陳述書の関係の聴取内容など結果につきましては、いま委員からお話のあった通り、「分からない、記憶がない」という回答でございましたので、というのが事実です。ですから我々とすれば、この陳述書のみをもって、そういう事実があったという風なことは、関係者にも確認して、それを裏付ける証言があるのかどうかということを、元部員あるいは前任校の管理職等にも聞き取りをしたわけですが、裏付けとなるような証言が得られなかった、要は一致しなかった…

【斉藤委員】
 否定したかどうかを聞いているんですよ。否定した例はありましたか。質問をちゃんと聞いて答えてください。

【教育局長】
 さまざまご発言はありましたが、否定した例というものではございませんが、一致するものはなかったということです。

【斉藤委員】
 いわば元顧問、当事者でさえ否定できなかった。そして確認が正確じゃないと思うんですよ。私がさっき紹介した、いつどこで誰が、実際に暴行を受けた元部員の名前がはっきりしていますよ。T君、M君、O君、確認したんですか、この陳述書で。そういう暴行を受けていたと、この方々から確認しましたか。

【教育局長】
 個別にどの生徒から確認したということは申し上げられませんが、いずれ7人を確認して、一致する証言は得られなかったという事実だけはその通り申し上げておきます。

【斉藤委員】
 私は具体的に証言で暴行を受けたという、そういう元部員から確認すれば一番良いことじゃないですか。具体的に証言しているんですよ、こういう生徒が、本人も含めて暴行を受けたと言っているんだから。尋常じゃない暴行ですよ。関係ない人に聞いて「一致しなかった」なんて、そんなの調査にならないでしょう。もう1回はっきり言ってください。この陳述書に書かれている、暴行された生徒から聞きましたか、聞きませんか。

【教育局長】
 いずれ対象となる生徒さんは、前任校事案で40数名ございましたが、聴取に応じていただいた7名から確認しましたが、そういう情報は得られなかったということは申し上げております。

【斉藤委員】
 もう1回聞きます。その中に、私が指摘した、陳述書で具体的に指摘された人は入っていませんね。

【教育局長】
 実名が挙がっている方は、ヒアリング対象となってございません。

【斉藤委員】
 だったら陳述書の確認なんかできないじゃないですか。
 これだけ裁判で陳述書が出されて、実はこの陳述書の人に確認をしているんです、再調査で。「この証言は事実です」と、本人は二度にわたって証言しているんですよ。そして元顧問教師は否定できなかった。ここで指摘をされた生徒から調査をしなかった。そんな馬鹿な話がありますか。
 一審で明らかになった暴力・体罰についても、陳述書で明らかになった深刻な暴力・暴言・体罰について、県教委は全然正面から対応してこなかった。これが一番の問題だと思いますよ。そう思いませんか。そういう暴力・暴言に正面から対応しないで無視してきた。それが裁判の結果じゃないですか。

【教育局長】
 この当該職員は、二度にわたり懲戒処分を受けていますが、我々先般の免職処分に関しましては、前任校から自死事案に至るまでの関係職員を調査、ヒアリング等をしまして、事実認定できるのはどこまでかということを慎重に整理・確認したうえで、今般免職処分ということにはなりました。ただ、必ずしもそういう陳述書で申し立てのあった内容につきましては、当時、かなり年数経ってますから、みなさんからヒアリングの協力が得られるわけではございませんので、その中で我々は全力を尽くしてこういう結果に導いたということでご理解いただきたいと思います。

【斉藤委員】
 第三者委員会の報告書で県教委についてどういう指摘がされているか。「生徒への不適切な言動及び体罰を理由にして、X顧問に対して減給1ヶ月の懲戒処分を下した。しかし繰り返しになるが、県教委は処分を下すまでの裁判の過程において、当該X顧問の不適切な指導について、すでに確認していたのであり、その時点で必要な対応や対策をとる必要があった。それを怠ったことによって、校長の不十分な管理・指導、そして本件事案とつながった可能性は否定できない」と。一審でのそういう体罰の事実に向き合わなかった。二審はもっと深刻だったと思いますよ。この陳述書の陳述についてあなた方は向き合わなかった。そのことが、本当に直後に「自死」という事件に至った可能性があると言っているんですよ。この県教委と対応と責任についてどう調査をしていますか。処分をする予定はありますか。

【教育局長】
 先ほどの回答に補足させていただきたいと思います。部員には40数名関係部員がおるという話をいたしましたが、三度にわたりヒアリングのお願いをしましたが、応じていただけないという方々もおりました。
 ただ今の質問でございます。第三者委員会でいま委員から指摘があった通りの指摘がございました。裁判におきましてもですね、当該教諭による前任校での不適切事案にかかる判決で、顧問教諭の言動が人格を否定し、貶める、教員としての裁量を超える違法な行為であるという風にされたところでございます。岩手モデルの策定委員会におきまして、これら調査報告書の提言を受けまして、学校・教育委員会のいま対応をまさに検討している段階でありまして、先日中途の報告をさせていただきましたけれども、先ほどの話に重なるところもありましたが、再整理のうえ、これを明らかにしていきたいと。それで、処分権者というのは教育委員会とまた別ではありますが、事実解明の件については、やはり裏表の関係ございますので、組織の問題がなかったかどうかということを確認しつつ、それが仮に個人の責任を問うような非違行為があるのであれば、それは処分に発展するという可能性はあると思いますので、平行して進めているとご理解いただければよろしいかと思います。

【斉藤委員】
 私は第三者委員会の報告にもあるように、第一審でも明らかになった虚偽の供述、体罰を認めた。高裁ではもっと深刻な暴言・体罰の実態が明らかになった。しかしあなた方は、そういう暴力・暴言の事実に正面から向き合わなかった。だから簡単な処分になったんですよ、減給1ヶ月という。暴力・暴言の実態を明らかにしないで。それは今もです。再調査したにもかかわらず、この陳述書の具体的な証言を確認できなかったと。処分の理由にもならなかった。
 勇気を奮って証言した人が本当にかわいそうですよ。二度にわたって。そして顧問教師が否定できなかった事実ですよ。それでもあなた方はこの暴力の事実に正面から立ち向かおうとしてない。これでなぜ再発防止できるんですか。
 最後に教育長に聞きましょう。本当に過去のこういう暴力・暴言、明らかになった暴言、今問題になっている暴言、この事実に正面からあなた方が立ち向かわなかったら、どこに県教委の対応の問題があったのか、第三者委員会の報告でも指摘されたその問題に真摯に対応しなかったら、再発防止なんかできないじゃないですか。そのことを最後に聞いて終わります。

【教育長】
 第三者委員会による調査報告書の中で、学校および県教育委員会の対応について不足する部分があったという指摘、先ほど委員からもありました。そのことについて、私ども今度は岩手モデル策定委員会の中で、理由の解明チームのところで事務局と、それから岩手モデル策定委員会の外部の委員さん方からも、その当時の関係者のヒアリングする聴取内容、これについてもご意見等いただいて、こういったところを確認してくださいということを確認をして、そしていわゆる第三者の視点も交えた客観性を持たせた形での調査を進めてきております。そしてそのことにつきまして、第7回の岩手モデル策定委員会の場で報告をさせていただき、そしてその内容についてもその場で改めて岩手モデル策定委員会の委員さん方から、さらにこういったところを確認していただくようにということで指摘もございました。そういった追加補足的な調査を現在進めているところでございます。
 そしてそういった当時在籍していた職員等からの事実確認を引き続き進めながら、さらに必要な追加補足的な聴取を行ってまいりまして、その結果を踏まえて県教委としての処分等について判断してまいりたいと考えております。

【教育局長】
 先ほどの斉藤委員への答弁で誤りがございましたので、訂正させていただきたいと思います。
 陳述書に関して、7人の元部員からヒアリングをしたと。その中に1人、陳述書に登場してくる3人のうちの1人が含まれていると。1人については確認できたということですが、ただ、陳述書と同じ内容の証言はその方からも出てこなかったということで訂正させていただきます。

【斉藤委員】
 いま重大な答弁の変更がありました。3人のうちの1人はいたと、7人の中に。陳述書は、いつどこで具体的にどういう暴力・暴言があったのかと指摘しているんですよ。その1人はその事実について否定したのですか。どういう証言ですか。

【教育局長】
 同じ内容の証言は得られなかったということでございます。否定をしたということではないですが、同じ証言は得られなかったという調査結果でございます。

【斉藤委員】
 陳述書の検証をするんだから、「陳述書ではこのように指摘されていますよ。事実ですか」と、こう確認するのが当たり前じゃないですか。同じ証言を得られなかったと言うけれど、陳述書について事実かどうかでしょう。そういう聞き方をしていないんですか。

【教育局長】
 そういう事実をあなたは知っているかどうかということを確認したところ、そういう事実は知らないという証言を得たということです。

【斉藤委員】
 あとで聞き取り調査の概要を明らかにしてください。これ本当に大事なことだから。あなた方が暴力・暴言の事実にどう真摯に向き合っているかどうかなので、根拠をあとで示してください。