2020年10月22日 決算特別委員会
農林水産部(農業関係)に対する質疑(大要)
・新型コロナによる農業への影響について
【斉藤委員】
いま農家が一番心を痛めているのは米価の暴落の不安である。コメの需要減と米価暴落の状況はどうなっているか。
【県産米戦略監】
コメの需要減については、国が公表した令和元年7月〜令和2年6月までの全国のコメの需要実績は713万トンとなっており、前年の735万トンと比較し22万トン減少している。
米価については、令和2年産の本県ひとめぼれの取引価格は、9月末時点で60キロ当たり15100円となっており、令和元年産米の出回りから本年8月までの平均価格15317円と比較し217円低下している。
【斉藤委員】
農家の減収の見通しはどうなるか。10ヘクタール規模、100ヘクタール規模の集落営農ではどういう減収になるか。ナラシ収入保険の加入状況、補償の見通しはどうか。
【県産米戦略監】
全農岩手県本部が決定した令和2年産米の概算金の引き下げ額である60キロ当たり800円と同額で米価が低下したと仮定し、国が公表した本県の10アール当たり予想収穫量558キロに基づき試算した場合、前年と比較し、経営規模が10ヘクタールでは74万4千円、100ヘクタールでは744万円減収すると試算される。
【水田農業課長】
ナラシ対策の加入については、面積の方でお示しさせていただくと、主食用米の作付面積で48200ヘクタールあるが、そのうち加入されている面積は17507ヘクタールとなり、割合としては36.3%となっている。
【団体指導課総括課長】
本年9月末現在の主食用米の作付面積ベースで、収入保険の加入割合は18.3%となっている。
【斉藤委員】
10ヘクタールでは74万4千円、100ヘクタールでは744万円減収するというのは大変なことだと思う。
ナラシ対策は面積で36.3%、収入保険は面積で18.3%、合わせても54.6%しか補償の対象になっていない。これも大問題だと思う。なぜそうなのか。農家戸数で見たらもっと少なくなるのではないかと思うが、農家戸数ではどうなるか。
そして生産費から見て、今までも200ヘクタール以下は赤字だった。今回の場合、農家戸数で見たらどれぐらい赤字になるか。
【水田農業課長】
ナラシ対策について件数としては、対象が認定農業者であるとか集落営農ということで、その中での加入ということで約2000件とおさえている。
生産費については、最新の値となる平成30年産の東北の米生産の作付規模別で、全算入生産費は、2〜3ヘクタールの作付規模で60キロ当たり14163円、10アール当たりに換算すると12万1766円となる。3〜5ヘクタール規模では、60キロ当たり13075円、10アール当たりでは11万2265円となっている。令和2年産のひとめぼれの概算金を基に、9月15日現在の国の作柄概況で示された本県の10アール当たりの予想収量である558キロを用いて試算すると、11万4390円となる。よって、3ヘクタール以上の規模で生産費を上回り、3ヘクタール以下は赤字ということで把握している。
【農政担当技監】
本県の米生産を行っている方は約34000経営体ほどあり、このうち黒字となる3ヘクタール以上の農家は約2700戸となる。3ヘクタール未満については約31000戸で約9割となる。
ただ、先ほどの面積ベースでのナラシ・収入保険の加入状況は54%と申し上げたが、3ヘクタール以上の農家の方が面積換算では5割ほどを占めるという状況になっているので、それ以上のところについて、ナラシあるいは収入保険ということでカバーされているものととらえている。
【団体指導課総括課長】
収入保険の加入戸数は1504戸である。
【斉藤委員】
いずれにしても、今までは赤字は2ヘクタール以下だった。今の答弁だと生産費では3ヘクタールまで赤字になると。これでは将来の見通しが立たない。
農家に生産調整を押し付けてきたこの政策がこれでは成り立たないと、ここがはっきりしたのだと思う。だから、コメの生産費を守る価格保障を国がしっかりやらなかったら、主食も農家も守れない。
例えば、アメリカ・カナダ・欧州は、政府が指示価格で穀物や乳製品を無制限に買い入れて、援助や輸出に回す仕組みを維持していると。やはりこういう時にはそのようにする。そうやって主食を支えているのが欧米の常識である。需要が減った、その犠牲は全部農家に押し付けるのではいけない。これでは農業を守れない。
そういう点で、JAは独自にコメ20万トンを隔離すると。新潟県は9月補正で、非主食用米への転換に、10アール当たり5千円の支援策を打ち出した。いわば米価をどうやって守るのか。この緊急対策を国も県も実施すべきだと思うがいかがか。
【農産園芸課総括課長】
コメの需給に関しては、県だけではなかなか難しいと。やはり国全体でそういうものを調整していく必要があるのではないかと認識している。そうした意味から、国に対しては一部隔離といったような部分の要望を出させていただいている。
産地交付金というものを使い、本県においては、多種の飼料用米について助成措置を同時に講じているところではあるので、引き続きそうした国の制度も活用しながらバランスある作付面積、主食用米と転嫁作物のバランスを確立していきたい。
【斉藤委員】
今の緊急課題は新型コロナウイルス対策だと思う。新型コロナ対策という立場から米価をどのように維持するのか。そして水田のフル活用をどう維持するのか。この点で国も、余ったから来年の生産量はその分減らすというやり方は全部農家に犠牲を転嫁するやり方なので、他の諸外国と比べても異常なやり方である。
新潟県の例を紹介したが、やはり水田のフル活用といった場合に、主食から外すというのも1つの効果的な手段だと。新潟県はコロナ対策としてやっているわけなので、岩手県もぜひそういう方向を検討していただきたい。
【農政担当技監】
今時点で先ほど答弁申し上げた通り、米価については実勢データで217円の減という状況になっており、まずはそこのところが何とか米価が下がらないように、政府によって市場からコメを隔離してもらう形の中で、スムーズにコメが動くような状態をつくると。あるいはそういった中で消費拡大や需給対策をまず今時点で取るべき対応だと考えており、まずそれを行ったうえで、委員ご指摘のようなことについて、必要性について検討していきたい。
【斉藤委員】
例えば飼料米の転換についても、毎年方針を見なければ分からないというのが農家の不安である。だから転換できない。やはり飼料用米をしっかり将来的にも支える、保障するという方向を打ち出してこそ、水田のフル活用ができるのだと思う。一方で、畜産をダメにして飼料米を使う対象もなくしてしまう、こういうことは許してはならない。
そこで、牛肉の価格下落と牛マルキン制度の拡充、生産者負担金の免除継続と全額補てんが必要だと思うがこの状況はどうなっているか。
【畜産課総括課長】
東京都中央卸売市場における本県の和牛枝肉価格は、9月の去勢牛A5等級の平均価格で1キロ当たり2531円と、もっとも需要が低迷した4月の2041円に比べ24%の増となっている。
牛マルキン制度については、県では牛マルキン制度の生産者負担金の納付猶予が令和2年4月から9月までとされていたが、肥育農家の経営状況を鑑みるとまだ払える状況ではないということで、国に対して納付猶予の期限を延長するよう要望してきた。このような要望等の結果、国においては生産者負担金の納付猶予について、10月以降も継続することとした。マルキンの交付金については、本県では生産者積立金が枯渇したということもあり、今のマルキン制度ではコメの国費分である4分の3のみの交付となったので、国に対して交付金を満額交付するよう3回ほど要望している。マルキンの交付金が4分の3のみとなっているということもあり、県としては4号補正により肉用牛肥育経営安定対策緊急支援事業を創設し、生産者積立金から交付されるべき交付金の一部を支援するという措置をとった。
【斉藤委員】
肉牛・畜産は岩手の農業の柱の1つなので、国へはしっかり要望しているということなので。
それで今根本的に問われているのは、食料自給率をどう高めるか。新しい政府の計画でも、食料自給率は45%まで高めると。ただ実態は38%である。そういう意味でいくと、本当にコメを守り畜産を守り農業を守るという政策への転換が必要だと。
・7年8ヶ月の安倍農政と菅農政の動向について
【斉藤委員】
そこで質問したいのは、7年8ヶ月の安倍農政の評価・総括についてである。安倍内閣は何をやってきたか。TPP―これは政権発足のときには総選挙で「TPPは絶対にやらない」と言って、3ヶ月後からTPP交渉を始めた。こういう公約違反から安倍政権は始まった。その後、日豪EPA、TPP11、日欧EPA、日米貿易協定…全面的な総自由化を進めてきた内閣は安倍内閣である。こんなに農業をつぶしてきた安倍政権を継続する菅政権では見通しがないと思うが、これだけの全面的な自由化というのは今までの内閣ではなかったと思うが、安倍政権の7年8ヶ月は農業分野こそ一番犠牲だったのではないか。
【農林水産部長】
国内では、いずれ人口減少等も起こっており、経済のグローバル化という状況も起こっている。それから地球温暖化や気象災害、今般の新型コロナウイルスということで、農林水産業を取り巻く環境は非常に厳しいということはその通りであり、加えて今般コロナの関係で特に食料自給率の関係がクローズアップされ、国もこのままの自給率の状況ではよろしくないということで、国産化を進めるという方向で舵を切っていると認識している。
県としては、さまざまな機会をとらえて現場の声、地方が元気になる農政を実現していただきたいということで、いろんなことを国に対しても要望しており、引き続き地方の現場が元気に農業ができる、持続可能な農林水産業が展開できることを求めたいと思っている。
【斉藤委員】
菅政権は「安倍政治を継続」である。こんな農業つぶしを継続されたらたまったもんじゃない。
私は安倍内閣よりも危険だと思っている。というのは、菅政権のブレーンを3人紹介すると、まず竹中平蔵氏、竹中平蔵氏は「中山間地に人が住んで農業をするからムダな行政をやらなければならない。原野に戻せ」と言った。こういう人が菅政権のブレーンである。もう1人は新浪剛史さん、この人はローソンの元社長で「米価を下げろ。企業進出を認めろ」と農業の規制緩和の先頭に立った。3人目は金丸恭文さん、この人はヒューチャーの会長兼社長で、いわゆる「農協つぶし」「種子法廃止」を先導した方です。菅総理は秋田の農家出身と言いながら、このブレーンは全く正反対の大企業に農業を明け渡す布陣になっているということをしっかり見て、日本の農業、岩手の農業を守る取り組みに岩手県の農政部は体を張って頑張っていただきたい。