2017年10月5日 商工文教委員会
商工労働観光部に対する質疑(大要)
・岩手缶詰・宮古工場、イチノベパンの従業員の解雇について
【斉藤委員】
サンマが不漁で76人が解雇だと。サンマ・サケ・イカなど主力魚種が大変な不漁に陥っているわけだが、大船渡の場合には、サンマの加工の水産加工の中心になる。宮古だけにとどまらない影響があるのではないか。現状をどう把握しているか。雇用対策をどのように講じられているか。
10月4日の東京リサーチの報道では、2017年度の上半期の倒産が31件、11年度上期以来の30件台となった。小規模事業者の倒産が増加傾向にあるが、特に一戸のイチノベパンが破産(負債総額8億2000万円)で146人が解雇された。県北の貴重な企業だったと思うし、全体でおそらく200人ぐらいの従業員がいたと思うが、なぜこのようになったのか。学校給食にもパンを供給していて、盛岡市まで影響を受けることになる。この破産について要因などどのように把握されて、雇用対策はどうなっているか。
【雇用対策労働室長】
岩手缶詰・宮古工場、イチノベパン、倒産件数の増加傾向については、雇用対策の面からも非常に憂慮している。
岩手缶詰・宮古工場については、正確な情報では従業員88名のうちパート従業員らの76名を解雇することにしたと。他の12名については、釜石や大船渡の工場への配置転換について相談をするということで、解雇の対象のパート従業員の対応を早急にやっていかなければならないということであり、こちらについては、ハローワーク宮古と連絡をとり対応を協議している。具体的には、これから説明会を行ったうえに、来週には離職者向けの支援制度についての説明会を行う。その際に、県の宮古振興センター、宮古市、ハローワークと共同して、再就職の雇用相談を受けるとともに、東北労金で使っているが離職者の生活対策、離職者向けの職業訓練といったことを駆使して対応していきたい。
イチノベパンについても、県北では大きな企業ということで、雇用についても大規模な65人の離職者ということである。こちらはまさに明日ハローワークで雇用保険などの手続きについての説明会を現地で行い、来週12日にハローワーク二戸に雇用対策本部を設置し、二戸地域振興センターや一戸町の担当課や商工会が一堂に会して、離職者対策について相談し、今後具体的な対応をしていく。
【経営支援課総括課長】
県内の倒産31件の全体的な状況だが、民間の信用調査会社のデータにもあるが、比較的小規模な事業者が事業を辞めるということでの割合が高いということで、全体的な景況としては、日銀などでも発表し「緩やかな拡大」とはなっているが、物価自体は変わらず、なかなか価格転嫁できないといったところで、業績が戻せないということで、事業を継続することを断念するといったケースが出ていると見ている。
【斉藤委員】
岩手缶詰・宮古工場については、水産加工全体の大きな問題ではないかと聞いた。大船渡の大変頑張っている水産加工会社に先月行ってきたが、昨年確保した冷凍サンマで対応している。これがいつまでもつかということになる。それが途切れたら本当に立ちゆかなくなる。サンマも実際半分以上は輸入している。岩手缶詰・宮古工場はこのような形で出たが、かなり深刻な状況になっているのではないか。
イチノベパンについては、146人の解雇となっているが、65人との答弁だったのでどちらが正確か。イチノベパンも県北の企業としては大きい比重を占める。それで聞くところでは、応援する企業があったらしいのだが、税金を滞納していて、これはきちんと対応しないとだめだという企業で、なぜこのような破産まで陥ったのか。必要な手立てをとったらここまで至らなかったのではないか。そういう点で倒産の原因や対応を把握しているのかと聞いたので。
【雇用対策労働室長】
イチノベパンについて、八戸工場もあるので、全体の従業員は146名であり、今回説明会の対象となるのは、二戸市・一戸町・軽米町・九戸村居住者が65名ということである。
【経営支援課総括課長】
水産加工だが、お話のあった通り、サンマもそうだが、イカやサケも漁獲が不振だということで、加工業者の方々が原材料の手配が大変だということで、なかなか難しい状況が続いている。今のところこういう形で出たのは岩手缶詰だけだが、業者の中では、対応する魚種の幅を広げるとか、魚以外の部分を手がけて、仕事の確保に取り組んでいるところもある。また水産関係の事業なので詳しくは承知していないが、遠方から原材料を調達すると経費がかかり増しになる場合の支援もあるということで、水産部門とも対応を進めていきたい。
イチノベパンの経過については、直接会社から聞いているものではないが、お話あった通り、事業継続に向けて検討されていたようだが、なかなか恩恵にあずからなかったと聞いている。
【斉藤委員】
水産加工は、岩手県の食料製造業の、特に沿岸の中心産業である。去年に続く大不漁なので、本当によく現状も把握して、諸機関が連携して対応すべきである。せっかく8割方が復旧したわけで、設備も立派な冷凍庫を確保したり、冷凍庫にいま原材料が入っていない。従業員の不足もある。そういう意味で、復興途上での大不漁続きの中で、岩手缶詰の工場休止が出るという状況、本当に危機感をもって緊急対応をしっかりやっていただきたい。
・県内の雇用確保―県内就職率向上の取り組みについて
【斉藤委員】
9月30日付の報道だと、東芝・北上新工場は、投資1兆円以上、雇用1000人規模ということで、そして北上新工場は量産拠点だという嬉しいニュースがあった。前の商工文教委員会でデンソーに行ってきたが、デンソーも工場を増設して、約200名ぐらい雇用も増やすということでこれも嬉しいニュース。しかし、こういう企業は県内の優秀な人材確保を目指しているわけで、ところが県内の高校生の県内就職率は29年3月で66.3%、下から11番目である。福島は76%、山形78.1%、宮城81%と、10ポイント以上差がある。東芝やデンソーだけでなく、県内の有力な中小企業を含めて、いま人材の確保はもっとも切実な課題の1つである。そういうときに、優秀な県内の人材が、県内に就職する、定着する取り組みを、これまでの延長線上ではなく、思い切って進めるべきである。昨年来言っているが、せめて高卒の県内就職率は10ポイントぐらい一気に上げるぐらいの対策をしなければ、地元の企業の期待に応えられないのではないか。
【雇用対策課長】
第3期アクションプランでも目標値については67.6%に段階的に近づけるということで目指しており、岩手労働局の統計では29年3月卒で66.3%と、28年度の目標値65.5%を上回ったところである。
今年度、県において、就業支援員による高校との連携強化や県内就職の支援を行っているほか、企業見学会・インターンシップなどの取り組みを展開しているということで、地元の就職の意識は高まってきていると認識している。また、今年度においては、いわてで働こう推進協議会の中に、高卒者の県内就職ワーキンググループを設置し、県内就職の高い地域の現状分析や調査を行い、その結果をもとに取り組みについて意見交換を行い、提言をとりまとめることとしている。今年度については、教育委員会や企業と一緒に山形県に行って参りまして、その辺を取りまとめて、各構成団体とも連携しながらマッチングを進めていきたい。
また、先日の若年者雇用動向調査の中でも、本県の出身の約7割の方が県内就職を希望しており、県内就職率を高めるためのポテンシャルは十分にあるということで、希望がかなうように取り組みを進めていきたい。
【斉藤委員】
やっとこれからワーキンググループということだが、発想の転換を感じない。せっかく東芝が新工場を建設する、デンソーも増設する、地元の中小企業も優秀な人材を求めているときに、下から11番目で低迷しているのに、去年から少し上がったという程度ではいけない。東北3県と10ポイント以上違うので。
本会議の議論でもあったが、39人の就業支援員を配置していて大変頑張っていると思うが、高校ごとに10ポイント上げようと、こういう取り組みを具体的にやらなければいけないと思う。本気になって、そのための障害は「地元の企業を知らない」というのが圧倒的だった。地元の企業を、中学校段階から、地元にどういう企業があって、どんな役割を果たしているかというキャリア教育などさまざまな取り組みを進めながら根本にはあると思うが、ぜひ発想を転換して、10ポイント上げて、東北3県と同じぐらいのレベルに、これは決して高いレベルではないので、せめてそこまで引き上げていく必要があるのではないか。
【商工労働観光部長】
心は同じであり、一人でも多くの方が県内就職されるように鋭意取り組んでいるが、就業支援員は本当によく頑張っている。なんとか地元企業をお知らせして、マッチングに持ち込んでいくと。また、学校の先生たちも忙しい中親身になって活動していただいている方も多く、いよいよ東芝・デンソーというネームバリュー、子どもたちや親御さんも変わってくるのではないかと期待している。そういったことで、インターンシップや見学会、出前授業など、さまざまな手を練って繰り出しており、その効果が出てくるように、また来年度は現計画の最終年度であるので、計画値をはるかに上回るような成果が出ればと思っているが、まずは現計画の中でできる限りのことをやっていきたい。
【斉藤委員】
先日、いわて復興塾が大船渡市であったが、講師の方のお話で、岩手の産業というのは、沿岸にしても漁業・水産業に偏っていないと。工業もあり、誘致企業の優等生は北上・花巻だと。全国的にもそういう誇れる取り組みがあって、産業がバランスとれている、だから取り組み次第でいろんな希望に応えられる。こんなに低いはずはないと思う。そこに自身を持って取り組んでいただきたい。
・三陸DMOセンターの取り組みについて
【斉藤委員】
釜石市長さんに先月お会いして直接要望を受けたが、なぜ三陸DMOの事務所が盛岡にあるのか、三陸でこそ英知を結集してやるべきだと。この三陸DMOの取り組み、今後の方向性はどうなっているか。
【観光課総括課長】
現在は主たる事務所は県庁の観光課内にある。三陸DMOセンターは昨年4月に立ちあがったばかりで、昨年はいろいろな三陸をフィールドにした調査事業を行っており、例えば、三陸にどのようなお客さんがいらっしゃっているか、その満足度はどうかといったことの取りまとめをしている。今後、それを生かして、同時に、各地域における具体的な旅行のプログラムを作れる方々、こういうものをつくっていこうということで人材育成事業に取り組んでいる。
このようなプログラムを実行するうえで、外の旅行会社等との営業活動が重要であるので、現時点では盛岡に事務所を構えている。ただし、今年の4月から各広域振興局に、コーディネーターとして1名ずつ県の方で配置しており、この方々を中心にさらに地域の市町村や観光協会など、いま釜石市ではDMO設立の動きがあり、そうしたものと連動していくものである。
三陸DMOなので、現地機能は非常に大切であるので、そうしたコーディネーターを中心にまずは取り組みを進め、今後の展開によっては営業所といったものについても検討は進めていきたい。
・陸前高田市のオートキャンプ場・モビリアについて
【斉藤委員】
陸前高田市長さんから要望を受けたが、大震災後、仮設住宅が整備され今もある。これは県の施設で、陸前高田地域振興(株)が委託を受けているが、去年は800万円の赤字だったと。モビリアを使ってその収益で運営するが、使えない。そして施設も老朽化している。
震災前は、5つ星で、予約も大変な注目されたオートキャンプ場だった。この仮設住宅は1年2年は続くと思うが、今後の方向性を明確にしてやっていただきたいという要望だったのでお聞きする。
【観光課総括課長】
大震災後、オートキャンプ場に仮設住宅が設置されており、まったく使えない状況になっている。さらに「ケビン」というものには、復興工事関係者が長期宿泊をしているという状況だったが、復興事業が進展するにつれ、また復興関係事業者が独自に宿泊施設を建設したことにより、宿泊者が減少している。つまり、モビリアは元々観光目的の施設だったが観光利用がなされていない非日常的な状態なので、私も陸前高田市長さんから要望を受けている。これについては、陸前高田市や陸前高田地域振興(株)とも、今後の運営についてよく相談していきたい。32年には仮設住宅が撤去される計画でもあるので、そこを見据えて長期的な展望を検討していきたい。